玉響〜symphonia〜
□Road of …1.守るべきもの
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大陸の端の小さな小さな国。
農業を生業とし、日々を過ごす民たち。
緑が豊かなこの地には、誰もに愛される姫が居る。
「コレット〜リンゴ取りに行こうぜ!」
「うん!あ、待って〜!ロイドー!」
「早く早くぅ!置いてっちゃうよ〜?コレット」
「ジーニアスも待って〜」
笑い声が響く。ここは幸せの国。
姫の名はコレット・ブルーネル。
柔らかな稲穂のような金色の髪に美しい緑の瞳。
彼女の微笑みは平和の証。
その身に背負う辛い運命を感じさせずに、皆に暖かな心を振り撒く太陽の姫。
「全く…勉強の時間が終わった途端に、すぐこれなんだから」
言葉の割に笑ってリフィルが言う。
リフィルは姫の教育係。自慢の銀髪をいつものように外に跳ねさせ、手には赤いチェックのブックカバーをかけた文庫本を持ち、黒縁の眼鏡をかけている。
「貴女も終わった途端に切り替えているようだな」
「それはもちろん。貴方は?姫を追いかけなくていいの?」
「もちろん追いかけようとしていた所だ。ここは平和だからな…何も起きないとは思うが」
「分からないわよ〜?無理して木に登って落ちるかもしれないし、木の根につまずいて転ぶかもしれないし」
「…姫ならあり得るからな」
「わかってるじゃない。じゃあ此処よろしいかしら?」
「ああ。行ってこよう」
休憩に座っていたベンチから離れ、姫たちの行った方へと向かう。
「子どもは元気だな…」
特にロイドなんかは姫の勉強中に剣の稽古をしていたのに、終わった途端に遊びに走り出して行った。
我が弟子ながら大したものだ。
「コレットも早くおいでよ〜」
「うん!」
ちょうどリンゴの木の所で、木登りをしているのに出くわした。
よく日に焼けた茶髪の少年が木の上から手を振る。身の軽いロイドはきっと真っ先に上に登ったに違いない。
その隣の小柄な銀髪の少年…リフィルの弟ジーニアスは、あまり運動が得意ではないハズだが…ああ、なるほど。
側に置いてある梯子。
これを登ったんだな。
ロイドの仕事道具だろう。
父である庭師のダイクの手伝いをしているし、普段どこに置いてあるかもわかっているだろうからな。
そして次は我が姫の番か。
梯子を使って登る気なのだな。
間に合うだろうか?
「もうちょっとだよ!頑張ってコレット」
「う、うん。……あ」
「コレットぉー!」
足を踏み外した姫がまっ逆さまに落ちる。
「姫!」