玉響〜symphonia〜

□拍手お礼文
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「…ッ!ちょっ…ゼロスっ…やめっ………」

何だい!?この、いきなりの展開は!?

あたしは、迎えに来たのにゼロスがまだ寝てるってことで、帰ろうとしたんだ。
それなのに執事に

「仕事があるので代わりに起こしていただけませんか?」

とお願いされ、仕方なく寝室に入っただけなんだ。

そして寝惚けたゼロスに布団に引きずりこまれ…

「ヤッ…起きなよ!ふざけんじゃないよっ……」

「俺様、目ぇパッチリよ?」

「じゃあ、変なことしてんじゃないよ!」

「寝惚けてる時なら許される?」

「どんな場合でも駄目に決まって……ッ!んん…」

抱き締められ、身体中に触れられ、唇も何度も奪われる。

「ゼロ…スッ……!」

「ハッ…やば…マズイ……」

「ゼロス…?」

より一層、強く抱き締められた。

「目、閉じて。全部、俺に委ねて………」

「何言ってんだい?」

「閉じて」

「…ッ」

少し低めのその声に抗えず、ゆっくり目を閉じると、優しく、唇に唇が触れた。
舌が…入ってくる……。

「んっ…」

流されてしまいそうな甘い甘い口づけ。

…ダメだ………



「ゼロス様〜。朝食の準備が出来ましたので、いい加減、起きてくださいませ」

メイドの声に現実に戻り、ゼロスを突き放そうとした。

「まだ」

「…ッ。駄目だよ…せっかく用意してくれた膳が冷めちまうよ!」

「いい。今は…しいなを味わってたい……」

ホントに、どうしちまったんだろう?
いつにも増して、オカシイ。

「…そばに居たい」

絶っっっ対に変だ!
そしてふと気付く。

自分も急なことで熱が上がってしまって気付かなかったのだが、やけにコイツの身体、熱くないかい?

「…熱が、あるんじゃないのかい?」

「しいな抱き締めてるから」

「…ッ!バカッ!それだけじゃないだろう!?」

「…大丈夫」

「大丈夫じゃないよ!誰か呼んでくる!」

「…ヤダ。もっと、そばに居て…しいな」

オカシイだろっ!!

「…しいな」

「…ッ」

「そばに…居るぜ?」

…話が変だ!
なんでそばに居て〜とかお願いした方が、私のそばに居ないといけないのさ!?

「しいなの熱が下がるまで」

熱があるのはそっちだろ!

「しいなの方」





ひんやりと、冷たいものが額に触れ、目が覚めた。

「あれ…?」

「あ、しいな起きた♪」

見慣れた顔が覗き込んできていて、不意打ちに驚いた。

「しんどいか?調子悪いのに無理矢理来させたみたいで、ごめんな?」

「調子悪いのはアンタだろ?」

「…本当に調子悪いのな。治るまでゆっくりしてけ」

「???」

「来ていきなり倒れるからセバスチャンもビックリよ?熱は8度9分だって言うし、俺様ビックリして心臓止まるかと思った」

ひんやり…ほねばった手が額に触れた。

「おかゆ、持って来させるから、俺様が直々に看病してアゲル」

「な、なんでアンタに見てもらわないといけないんだい!平気だよっ!!」

「そう見えないから言ってんのー。たまには俺様に甘えてv」

「…ヤダ。ヤダヤダヤダ!放っといとくれよ!」

「無〜理。病人なんだからしっかり甘えてちょーだい」

「意味が分からないよ!バカバカバカバカバカバカ!!」

「…こりゃ重症だな」



それから丸三日間、私はゼロスの屋敷で至れり尽くせりの看病を受け、無事に完治した。

弱みを握られてしまった…。





『match』のもうひとつの展開案でした。デートが書きたかったから没にしたけど。
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