玉響〜symphonia〜
□紫陽花
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「紫陽花が綺麗に咲いてるねぇ!もうそんな季節なんだね…」
しいながふと立ち止まった。
そばには水色と赤のモコモコとした花が咲いていた。
「この花の名前?」
聞き慣れない単語が聞こえたから確認してみる。
「そうだよ。紫陽花(あじさい)って言うんだ。今の時期が一番綺麗でね、今日みたいな晴れの日もいいけど、雨の中でしっとりと咲くのがまた風情があってねぇ…里でもきっと今、満開なんだろうな」
「何で同じ木から違う色が?」
「そういう花なのさ。土の質によって変わるんだよ。赤だったり青だったり…不思議な花だよ」
「土の質で…?じゃあ今この木の下は…」
「質が変わってる途中なんだろうね。酸性からなのかアルカリ性からなのか、よく分かんないけど」
「なんか、俺様みたい」
「は?」
「俺様も今、変わってる最中だから」
「何が?」
「色々と」
「…?」
何を言っているのかと、しいなが怪訝な顔をする。
ホント、自分に嘘がつけないっていうか何ていうか、正直者だよな。
「しいなのせいで」
「あたしのせいってどういう意味だい!?」
「文字通り。しいなの真っ直ぐなトコとか、感情表現豊かなトコとか、意地っ張りなトコとか…全部が俺様に影響してんのよ?もちろんイイ意味で」
「え…?」
「ま、分かんなくてもいいや」
しいなに会ってから変わったことは沢山ある。それだけ俺様にとってしいなは大きな存在なんだけど、自覚なしか。そこがまたいいんだけど。