玉響〜symphonia〜

□レッド×タイガー
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真っ暗闇にちらりと光る赤い髪。蒼の瞳は狙った獲物を逃しはしない。

朔の日は、特によく目が利く。一直線に駆けていく姿はさながら闇夜のハンター、虎のよう。

『今夜、君を奪いに参上す』

晴れの舞台の演出はぬかりなく。
派手に予告状を送り付け、黒マントを翻し…華麗に登場。

「さぁどのくらい楽しませてくれる?」





今宵の獲物は色とりどりの宝石が嵌め込まれた王冠。

大切に大切に宝物庫にしまってあったものが、満を辞して公開された。

ガードシステムや、警官をすり抜けて、奪う。

うまくいきすぎて怖いゼ。

「楽勝!楽しょ…う……!!」

顔の横を凄い速さで風が掠め、玉のような素肌に傷がつく。
更に放たれた銃弾が肩に突き刺さる。

「…っ!くそっ!!」

左腕の…自由が利かなくなる。
更に左足の辺りに弾が当たる。
とりあえず逃げろ!必死に走っていると、そんな自分を嘲笑うかのように雨が降ってきた。
いや…好機かもしれない。
更に深くなる闇の中、身を隠す。
どっかの貴族の屋敷か…。
傍の大きな木にとりあえず身を寄せる。

「…ッ。〜〜〜〜ッ!」

何処からかすすり泣くような声がして、見上げてみると、ベランダの柵に寄りかかり泣く娘の姿があった。

黒髪の美しい娘は、ピンクのドレスを着ていた。
どうやら家の中でだけ着るもののようで、派手さはない。

「…!誰!?」

涙に濡れた茶色の目がこちらを向く。
この暗がりの中、見えては居ないだろう。

「居るんでしょう?誰?」

誰も居〜ませんよ〜?

あぁ…にしてもいてぇ。情けねーの。

「居るなら返事しなっ!」

バシッと靴が顔めがけて飛んできた。

「ぶっ!」

なんて乱暴な娘だよ…。

「居るのは分かってんだ!名乗りな」

あーあ…バレちゃしょうがねぇよな〜。

「…怪盗だって言ったら?」

「ちょうどいい!」

は?何がだ?

次の瞬間、娘は飛び降りてきた。
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