玉響〜symphonia〜
□letter
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「おっはよー!…しいな?」
くつ箱の所で、固まっているしいなを珍しく早めに登校してきたゼロスがみつけた。
「しいなちゃ〜ん?」
しいなの手元には一枚の爽やかな水色の紙。
「なに〜?ラブレターでももらっちゃったー?」
わざとふざけて言ったゼロスを、しいなが無視する。
それぐらい、混乱していた。
「しいな!」
近付いて声をかけるが気付かない。
「し・い・な」
気付かないのに腹が立ち、耳元で低い声で囁き、ふっと息を吹き掛ける。
やっと、ピクリと反応し、しいなの茶色い瞳がゼロスを捉えた。
「あ、アアア…アンタかい!」
てっきりどつかれると思っていたゼロスは、面喰らった。
「なになに〜?それはもしかしてラブ☆レター?」
「な、なななななっ…べ、別にっ!そ、そんなんじゃっ…!!」
そんな赤くなりながら言われても…ねぇ?
「誰から誰からぁ〜?」
「だ、誰からだっていいだろう!?」
頑なに隠すしいなを見て、悪戯心がムクムクと膨れ上がってくる。
「見せて見せて〜」
「や、やだよ!なんで見せないといけないんだい馬鹿!」
隙を見て、手紙を取り上げる。
「あ、こらっ!返しなっ!!」
水色の紙面には黒ボールペンで
『藤林しいな様
伝えたいことがあるので、放課後屋上へ来てください』
名前も何もなく、ただそれだけ。
「しいなみたいな妖怪暴力鬼女にラブ☆レターくれる奇特な人が居るんだねー」
「何だってぇ!?」
いつもの軽口をたたくと、しいなが怒る。
「イテッ!殴るなよしいなぁ〜」
「殴るに決まってるだろう!?返しなっ!!」
「もう内容見たんだからいいじゃん。覚えたでしょー?」
「内容は覚えたけど、持っておきたいんだよ!」
「初♪ラブ☆レターだから?」
「…違うよ。手紙には色んな気持ちが詰まってるから……」
「捨てたりしたらバチが当たるって?」
「そうだよ!」
「なるほどねぇ。ハイ。じゃあ大ー事に持っておきなねー。初♪ラブ☆レター」
「……なぁゼロス。これ、ラブレターだとホントに思うかい?」
「へ?」
「これだけの文章じゃ、よく分かんないし…アンタはそういう手紙いっぱいもらってるだろうから…どう思う?」
「…あー、多分?俺様が貰うのは大体、思いの丈が語り尽くされている感じのが多いし、名前もちゃんとあるし…。それとは違う感じだけど、多分?」
「…そうかねぇ?」
「そうそう。で、放課後屋上に行くの?」
「そりゃそうだよ!真意を確認しないと失礼だろう?」
「べっつに、いい気がするけどねぇ。しいなちゃんたら律儀なんだから」
「しいなちゃんとか呼ぶな!気持ち悪い!」
「うわぁ…愛を込めて呼んでんのにー」
「アンタのは絶対違うね!」