玉響〜symphonia〜

□match
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「相変わらず、でっかい屋敷だねぇ…」

高級住宅街の中の一際大きな屋敷を見上げて、しいなは思わず呟いた。

そこは、彼女の天敵(?)クラスメイトのゼロスの屋敷である。

「なんで、あたしが朝っぱらからこんなトコに…」

出るのはため息。

ことの発端はクラスマッチの男女混合バレー。

当日の朝、ゼロスがしいなをからかってきて、いつの間にか言い合いに発展し、なぜか

「俺様が全ての試合で5以上アタック決めたら、お願いを1つ聞いてくれる?」

という話になった。

練習中はひたすらしいなか、ロイドがアタックをかましていたし、やる気のないゼロスはそれなりにしかやっていなかった。アタックなど打てないと思っていた。
だから

「やれるものならやってごらんよ。ま、無理だろうけどね」

という返事をしたのに…

目立ちたがり屋のゼロスは練習では見せなかった真面目な勢いで、余裕で全ての試合で5つ以上アタックを決め…クラスは優勝した。

そしてお願いゴトは…

「朝、学校行く前に家まで迎えに来て」

という、訳の分からないものだった。
何でもいいんだから、もっと他の願いゴトでもすればいいのに。とはいっても具体的には思い付かないけど…。

んで、来たのはいい。
しかし…知ってはいたが何だろうこの豪奢な屋敷は…。



「いらっしゃいませ」

門を入り、玄関までやって来るとタキシードを着た年輩の品のいい紳士が出迎えてくれた。深々と頭を下げられる。

「藤林しいな様ですね。お伺いしております」

なんだか学校でのアホな姿からは想像できないのだが、ゼロスはいわゆる『お坊っちゃま』らしい。噂通りに。

「あ、あの…ゼロス…くん…を迎えに来たんですけど……」

庭も広いし、玄関のドアも凝った作りだし、中は中で眩い光に満ち溢れている。
白い半袖シャツに赤いリボン、合い服のベストにブリーツスカート…くたびれた革かばん。
くせ毛の黒髪を安い髪飾りでまとめアップにしているだけの自分が明らかに不釣り合いなこの雰囲気。
気後れしてしまい、うまく言葉がつむげない。

「応接間にご案内するよう言付かっております」

「おうせつま…」

本の中くらいでしか出会わない言葉だ。

そして通された部屋は、自分の家が丸々すっぽり入ってしまうどころか、普通に生活するにも十分過ぎるくらいに広い。
更には大きなソファーや、きらきらしい装飾品、名のある画家の描いたと思われる絵画、高級そうな花瓶などが所狭しと置いてあり、あまりに自分の生活とはかけはなれすぎていて、開いた口が塞がらない。

こんな広すぎる所、落ち着かないよ!
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