□7月7日、晴れ
1ページ/2ページ

夜空に広がる天の川。

一年に一度だけ、会う事を許された織姫と彦星。

 

 

7月7日、晴れ。

 

 

「先生はやくー!!」

今日のための新調した黄色い浴衣が、桜色の髪をいっそう引き立てている。

「あんまはしゃぐと転ぶよー?」

一方こちらは、いつものマイペースでのんびりと中央広場へと続く裏通りを歩く。

その両脇には、色とりどりの短冊が揺れている。

見上げると、頭上に瞬く数え切れないほどの星が見えた。

 

「ホラ、あれが天の川」

分かりやすいようにしゃがみ込んで、目の高さを合わせてから指差す。

「じゃ、あのおっきいのが織姫と彦星ね」

「そーゆーコト」

「ステキよねえ・・・」

うっとりとそう呟く様が、妙にかわいらしくて。

 

だけど。

 

「なんで?年に一回しか会えないんだよ?ドコがいいのさ」

「えー?ロマンチックじゃない」

一年に一度しか会えない、というのがいいらしい。

 

だけど。

 

自分を見ていない瞳をこちらへ向かせて、口付ける。

「オレはイヤだよ、そんなの」

額に、瞼に、頬に、そして唇に。

「晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も、いつでもサクラに会いたい」

 

一年に一度、なんて。

毎日でも足りないくらいなのに。

 

不意に唇にサクラが自分のものを重ねてきた。

「サクラ・・・?」

「先生、それって欲張りよ」

微笑みながら、でもその顔はどこか嬉しそうで。

「そうだね」

 

見つめ合って、口付けを交わして。

「織姫と彦星に見せ付けてやろうか」

 

 

 

7月7日、晴れ。

織姫と彦星が、今頃夜空で羨ましがっている。

 

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ