□秋桜の花・・・後
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「おおー、キレイなもんだなー」

報告書を出し、帰路についた時、日課となっている二人の帰り道を
いつもとは違うコースで歩いていた。

そこは、小高い丘の上で、サクラのお気に入りの場所でもあった。

「でしょ。満開にはまだちょっと早いけどね」

満面の笑みで、カカシの驚嘆に答えた。

「んー、でも全部咲いてるより、つぼみが残ってた方がキレイだぞー?」

「・・・なん、で・・・?」

ふと、その笑顔に陰りが見えた。

 

あー、こりゃナンかあったな・・・。

 

たったの一瞬を、カカシは見逃さなかった。

「花が咲くには、つぼみが必要だろ?」

「うん、当たり前じゃない」

「で、桜の木には花とそのつぼみがイッパイついてる」

「・・・うん、そうよね・・・」

サクラには、カカシの言わんとしている事が分からない。

けれども、その一言一句をしっかりと聞いている。

自分自身のために。

 

「花はいっぱい咲いてるけど、つぼみだって花になりたい」

「・・・うん、なりたい」

「だから、つぼみは頑張ってるんだ。キレイな花になるために」

細い両肩に手を置いて、優しく諭すように言った。

「今咲いてる花より、キレイに咲くように」

 

サクラの頬に、一筋の涙が伝った。

その瞳は、真っ直ぐに七分咲きの桜の木を見据えている。

「・・・あたしも、花になれるかな・・・?」

あえてサクラの顔を見ずに、後ろから抱き締めた。

きっと、泣き顔は見られたくないだろうから。

「つぼみは、いつかきっと、花になるんだ」

「・・・その前に、枯れちゃったら・・・?」

抱き締める腕に力を込めて。

「オレが、枯れさせない」

その腕に小さな手をかけて。

「オレが、必ず咲かせてみせる」

自分に触れている確かな暖かさを感じた。

 

 

 

 

小さきは小さきままに

 

折れたるは折れたるままに

 

秋桜の花 咲く

 

 

 
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