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□『育』番外編
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「育」番外編

〜ニールくんの一日〜

6:00
ニールの朝は早い。
「うにゃ…ぐらはむ〜朝だよぅ」
カーテンから洩れる光にモソモソとベッドから抜け出そうとしていたニールでしたが、腰にがっしり回された手によって起き上がることができません。
ニールの恋人は見かけによらず力が強いのです。
「ニー…ル。愛してるよ…私の天使…」
そして、寝起きはいささか悪いです。
「…天使違うもん。ねごとばっかりなんだから。…グラハムのほうが天使様だよ」
キラキラ朝日に輝く髪をした大好きな人の頬を遠慮なくつねるニールのぷくっと膨らんだ頬が林檎色に染まっているのは決して朝日のせいではないだろう…



7:00
ニールは最近やっと使い慣れてきた…というか使うことを許されたキッチンで食パンを焼きながらスクランブルエッグを作ります。
ニールはずっとお母さんの手伝いをしていたので料理のやり方は何となくわかっていたのですが、過保護は恋人は(中身は)6歳のニールが料理をすることにいい顔をせず、最近やっと作れるようになったのです。
簡単なものばかりですが、一生懸命に作って丁寧にコーヒーを入れます。
「私は幸せ者だ。愛する人と目覚めて、愛する人の料理を食べられるのだからな」
そう言ってくれるグラハムに、ニールは照れ笑いをしました。


8:00
「名残惜しいよニール…」
「グラハム…」
「もう、二度と君と離れたくなどないというのに…」
ニールとグラハムは、かれこれ10分ほど同じようなやり取りをかわしていました。
ニールの顔は、ちょっぴり困ったような嬉しいような表情になってしまっています。
「だって、仕事だろ?おれちゃんと留守番してるし、気をつけて行って来いよ」
ニールだってグラハムと離れたくなんかありません。
でも、お父さんも仕事に行っていたし、大人の人はお仕事をしないといけないのです。
わがままなんて言えません。
それに
「わかっている…いってくるよニール…」
(ちゅっ)
こうして、いつもおまじないのように額にキスをくれるグラハムを笑顔で送り出したいから。
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