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□つむじ
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ロックオン・ストラトスことニール・ディランディは恋をしていた。

人種・年齢・性別すべて乗り越えて、まさに奇跡のような確率で今や恋人となった彼にロックオンはメロメロであった。

もしかすると他人よりちょっとばかし男女を問わず経験豊富である自分が、仏頂面の8歳も年下の男に本気で惚れるなんて全く想像もしていなかった…
でも今は、誰より何より彼ー刹那の仏頂面が愛おしくてしょうがなかった。

「ロックオン」

あまり感情を乗せないそっけない声だが、その中にほんの僅かに優しさや熱を感じさせる声が好き。

「…おい」

自分を見上げる強い光をもった瞳が好き。

「…何をぼんやりしている…」

何より。
自分の下にある、彼の少し硬めの髪質からのぞくつむじを見るのが好き。

…たまにつつきたくなるくらい
…怒られるからやらないけど

「ロックオン」

もう一度呼ばれて、やっと自分が刹那をじっと見つめていたことに気づいて急に気恥かしきくなった。
付き合って3か月。
そろそろ倦怠期に入ろうかという頃なのに、今だに見惚れてしまう程メロメロな自分が恥ずかしくもくすぐったくもあった。

「い、いや。少し身長伸びたかな〜とか」

とっさに出たのは、最近少し気になっていたことだった。
毎日顔を合わせていると意外に気付かないことというのは多いのだが、最近ほんの僅かでも目線が近くなったような気がしたのだ。

たいして含みがあっての発言ではなかったのが、それを聞いた刹那の顔は表情は変わらないまでも少し嬉しげに見えて、そんなところも可愛いな〜と頬が緩みそうになる。

「成長期だからな」

成長期。
そう言われると刹那は16歳で、成長期の真っただ中なのかもしれない。

だが、それを認識したとたんロックオンは雷に打たれたかのような衝撃を受けた。

可愛い可愛い刹那。
まるで弟のように思ったのが恋の始まり。
それがいつの間にか男になって恋をして。

だけど、いつの間にか思い込んでいた。


ずっとこのままだと。


考えたらそんなはずはないのだ。
刹那は成長して大人になる。
成長途上中の体が大きくなってたくさんの経験をして大人になる。

その時自分はどこにいるー?

そう考えると急に寒気が足元から上がって来て、ギュッと自分の左手で右腕をつかんでいた。


大人になった刹那。それは未来。
それは、不安。

だけど、そんな不安を刹那に押しつけるなんて嫌で、いつも通り笑顔で。

それなのに、刹那の顔はちょっと不機嫌そうで何か気に障ることをしたのかとコトンと首を傾ける。

「俺に無理に笑うな」

怒ったというより、拗ねたような声。
今まで誰も気づかなかったのに、いつも刹那はロックオンの気持にすぐに気付いてしまうのだ。
それが、なんだか無性に温かい。

「お前より高くって見下ろしてやる」

「…そっか」

成長期なんて言って、実は頑張って好きでもないミルクを飲んでるのを知っている。
ロックオンが嬉しそうだから文句は言わないが、子ども扱いをされるのは嫌いなのを知っている。
キスをする時、背伸びをしないと届かないのを不満そうにしているのを知っている。


「そうだよな…お前、俺が16の頃よりもうでかいんだよな…」

出会ったころは痩せっぽちで、野生の獣のような子供だったのにこうやっていつの間にか大きくなっていくのだろう。

そして、きっと自分も隣でそれを見ていくのだろう。

「いい男になれよ」

一日一日ゆっくりと一緒に歩いて行く。
そうして積み上げた日々の中、いつか刹那を見上げる日が来てしまうのかもしれない。
きっと、今よりもっと刹那に恋をしてしまうくらい素敵な男になってしまうのではないか、と思う。

…嬉しいような、怖いような。

「でも、もうしばらくは俺に見下ろさせろよ」

自分より背が高くなった刹那を見上げるのももちろん楽しみだが、まだ今は。

「お前のつむじ見られるのも、今のうちだけなんだからさ」

つむじを見ながら成長を楽しみにするのもよさそうだー。




…なんて!!!超乙女兄貴降臨です!!
乙女120%全開です!刹那を好きすぎです!!
…1234HITでMIKI様に『ロックオンが、刹那が14歳の頃より身長が高いから、成長したら抜かされるんじゃないかと無表情で悩む話』というネタをいただいておまけとして書いたのですが、のりのりで書きすすめ、大暴走☆です。
…まったく無表情ではありません(滝汗)
…MIKI様。いただいたネタとかけ離れてますが、よろしければどうぞ…

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