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□言の葉 はじまり
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言の葉 


グラハム・エーカーが自分の不思議な力に気づいたのは10歳を越えた頃のことだった。

父親は不明。
母親は水商売をしていたものの内蔵を悪くしてグラハムが10歳の頃あっという間に息を引き取った。
母は外国の血を引いていたらしく美貌だけが取り柄の女で、その血を引いたグラハムは整った容姿と金の髪というとても目を引く容姿をしていた。
だからこそ、色々なところをさ迷いながらも何とか命をつないできた。
子供が一人で生きていけるはずもなく、たちの悪い連中に絡まれたとき、ついグラハムはマグマのような怒りに口を開いていた。

『うるさい!消えうせろ!!!』

そんなことを口にしたのは初めてだった。
どうしようもない母親ではあったが、グラハムには事あるごとに「感情にまかせて汚い言葉をつかっちゃだめよ」と言い聞かせてきた。
グラハム自身もあまり人と関わるのは好きではなかったし、感情まかせに怒鳴りつけたりをしたことがなかったのだ。

だからこそ、自分の言葉に宿る力を知らなかった。

「「「ぎゃぁああああああ!!!!!」」」

重なる悲鳴。
飛び散る血。

何もしていないのに、彼らを傷つけるようなものは何もないのに、彼らの全身は切り裂かれ血が舞っていた。
そして、グラハムは本能的に悟った。


これは自分がやったのだと。


それは、男達を切り裂くと同時に自分の体を襲った痛みからもぼんやりとわかった。

普通ならとても信じられないだろう。
言葉が彼らを殺したなんて。

だが、現に彼らは死に自分の全身もその業を受けたかのように切り裂かれ血を流していた。

「これは…わたしがやったのか…」

それは疑問ではなく確信だった。

とても恐ろしいことなはずなのにグラハムは無感情な目で倒れ付した男達を見下ろし頬の血を拭う。
体中を襲う痛みと血の感触。

「は…はは…」

赤く染まる視界の中、グラハムの胸にあったのは途方もない虚しさと歓喜だった。

「私は…生きてみせる…」

生き抜いていくための力。
業を背負い、血にまみれ、生きていく。

例えその先に、地獄の道があろうともー。




というわけで、新連載です。
もはや人格崩壊をおこしておりますが、グラハムさんです(汗)
次回にはニール登場です。
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