小説(少年もの)

□ある王様の話
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 ある晴れた日のことです。バルフという国の王様が、宮廷の庭園を風の吹くままにぶらぶらと歩いていました。王様は宮殿の前にある池のふちにやって来ました。木々の隙間から洩れた光が水に照りかえって、池はゆらゆらと揺れています。水鳥たちが楽しそうに遊んでいます。
 王様はその光景をしばらく見ていました。いや、見ていたというよりも、目を置いていたという表現のほうが正しいかもしれません。というのは、王様はさっきから溜息ばかりで、何かずっと考え事をしている様子だったからです。王様は自分の心が何かを求めるのを感じていたのでしょう。
 王様は水面に映る自分の姿を見ました。そこにはバルフのすべての富を持つ一人の男がいました。その水面の男は、あごひげをさすって、自分が一国の王であることを思い出しました。
「私はこの国の主である。金も力も十分に持っている。それなのになぜ深く考えるようなことがあるだろうか?」
 王様はこう考えて、宮殿に戻ろうと、後ろを振り返りました。するといつの間に起きたことでしょう。王様の足元で見知らぬ老人が寝ていたのです。王様が驚いたことは言うまでもありません。王様はこのあやしい老人が刺客ではないかと疑いましたが、老人の幸せそうな寝顔を見て、その疑いが和らいできました。ですが、王様は警戒心を緩めたわけではありません。できる限りその老人の耳元に近づき、大きな声で言いました。
「おい、ご老人、お前は一体何者だ?」
 すると、その老人は倦怠そうに大きく背伸びをしました。そして、一つ大きなあくびをついてから、目の前の若者に言いました。
「わしはただ通りかかっただけじゃ。眠くなったから、ここで横になっておるんじゃ」
 これを聞いた若い王様は頭に来て言いました。
「ここは余の宮殿だ。お前はここをどのような場所だと心得ているのだ?」

(執筆中)

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