短編小説
□向かい側のホーム。
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≪──まもなく、3番ホームに電車が参ります…≫
満員電車に乗るのが嫌で、同じ学校の他の子よりもだいぶ早く、普通列車に乗る。
1本早い快速でも良いのだけれど、あの人を見掛けてから、私は毎日この電車に乗り続けている。
「・・・あ、」
風が吹き抜ける真冬のホーム。
まだ、人影がまばらな時間帯。
白い息を吐きながら、お気に入りの真っ白なコートの襟に首をすぼめていた私の瞳に、1人の男の人が映った。
──今日も、居た。
向かい側の3番ホーム。
前から3両目。
彼≠ヘ、いつものように、そこにボンヤリと立っていた。
私が毎日利用するのは2番ホーム。つまりは、彼とは全然違う方向。私がこのホームについて間もなく、彼は電車に乗って行ってしまうので、話すらした事ない。
それでも。
私の目は、いつの間にか毎朝彼の姿を探している。
あの、まだ蒸し暑かった夏の日から。
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