\おはなし!/

□恋のバカンス
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「謙也さんのドヘタレ」

「いや、光…、ちゃうねん…、あのな」

「…言い訳すんなや」

「光、聞け、」

「…うっさいボケ」

「……。」




「謙也さんなんて大っ嫌いや!」





































アカン、言ってもうた…っ

…言うつもりはなかったんや



ただ、謙也さんとお付き合いっちゅーものを始めて3ヶ月



付き合う前となにひとつ変わらへん!



3ヶ月やで!?

お互いの家に遊び行ってただ帰るとか…っ



おかしいやろ!



まぁ…
謙也さんも俺もノンケやったし

同性とのお付き合いなんて未経験

わからんことだらけや



けど3ヶ月やで?

キスの1つや2つあってもええはずやろ!



好き同士なら
好きな人となら

どうにかなりたいって思うんちゃうか…!?


なんやねんあのヘタレ!




「で、喧嘩したんか」

「…っすわ」

「…謙也も謙也やけど、お前もお前やなぁ」



俺と謙也さんの関係にいち早く気づいたんは白石部長

謙也さんと同じクラスやし、毎日目ざとく部員を見てるだけあって喧嘩の話も高速で伝わったらしい



「…俺が悪いんスか」

「そうは言うてへん」

「……俺だけやったんかな」

「……なん?」



「…俺だけが、謙也さん好きなんかな」







……アカン

なんや泣きとうなってきたわ

鼻がツンとする

目頭が熱い



アカン

泣いてまう







「謙也さん…、俺のこと好きやないんかなぁ」



「…嫌いって言ってもうたし…、嫌われてもうたかなぁ」



「…もう、一緒にいられへんのかなぁ…っ、」








最初は隣にいるだけで良かったんや

それだけで幸せやった



でも

『想い』は日に日に膨れて

謙也さんが好きで好きで大好きで






いつの間にか

わがままになってる自分がいた





「…ぅ、…っく、」

「財前…、」

「ぶ、ちょ…、っ、すいま…せ…っ」



























「白石ぃいい!!!」





びっくりした

何事かと思った



目の前で部長が謙也さんに殴られてるんやもん





「…いっ、てぇ…」

「俺の光に何しとんじゃこのアホボケカスエロ!!!いくら白石でも許さへんで!!!」

「…謙也、」

「光!大丈夫か!?このエロエクスタになにされたんや!?こんな泣いて…っ」

「け、んやさ…」



「泣かせてたんはお前やろ、謙也」

「……は…あ?」





「お前が財前に早う手出さんからやろボケ、ヘタレ」







謙也さんがポカンと口を開けて止まった






「…ったく、バカップルには付き合ってられへんわ」

「部長、大丈夫スか…」

「あー、平気や」

「し、白石…」





部長がふわりと笑い、

謙也さんに殴られたところを撫でながら俺らの横をすり抜けた




「謙也、





しっかり掴んどかんと、財前もろてまうで?」



「…な…っ、」

「ほな、また明日な」





謙也さんになんか言っとったけど聞こえへんかったな



…部長、男前やなぁ



申し訳ないことしたわ

今度なんか奢らんとなぁ










「…光、」



振り向くと謙也さんがいつものヘタレた顔で俺を見ていた



なんやねん、その顔


……なんでも許したくなるやろ






「……謙也さんのせいッスわ」

「……すまん」

「……部長に相談しとっただけです」

「……。」

「……謙也さんに嫌われたと思ったら悲しゅうてしゃあなかったんスわ」



「嫌うはずないやろ…っ!」






不意に視界が動いたと思ったら

謙也さんに抱きしめられとった





「け、けんやさん…っ」

「光、めっちゃ好き…っ」

「…え」

「ヘタレですまん!」

「謙也さん…」

「……ヘタレやけど、お前んこと誰よりも好きや!」






それから、きつく抱きしめられて小さな声で「大事にしたい」というのが聞こえた







どうしよう

俺、いま

めっちゃ嬉しい

嬉しすぎて



死にそう










「謙也さん、好きぃ…っ」

「光、ごめんな。光…、」

「ひ…っく、ぅ…、」

「光…、大好き…」




















それから後日

部長に謝りに行ったら



「財前がほっぺにちゅーしてくれたら許したるよ」



と、あの男前な笑顔で言うもんやから冗談で投げキッスしたら謙也さんにめっちゃ怒られた

心狭いヘタレやな




ま、そこが好きなんやけどな

ヘタレやからしゃーないッスわ








*******


大阪弁?なにそれおいしいの?



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