青の長編

□故郷と親子と面影と和解と
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「坊!!
ようお帰りにならはった!」

「子猫丸に廉造くんも」

「やー、こらめでたいわ!
女将さん呼んで来て、女将さん!」


真夜達が旅館に入るや否や、そこで働く者達は勝呂と子猫丸と志摩、京都出身者を見るなり騒ぎ始めた


京都出身者ではない者達は、ただ呆然としている


「やめぇ!!
里帰りやないで!
たまたま候補生の努めで…
聞け!!コラ!」

「竜土!!」


声を荒げながら騒ぎを沈めようとした勝呂だったが、女性の声が彼の名前を口にする


見ればそこに呼ばれて走って来たらしい女将と思われる着物を着た女性が立っていた


「…アンタ…」


勝呂は沈黙し、女将は呼吸を乱す


かと思いきや、彼女は怒りに顔色を変えて青筋を立てた


「…とうとう頭染めよったな…!!
…将来ニワトリにでもなりたいんかい!」



「アンタ、二度とこの旅館の敷居またがん覚悟で勉強しに行ったんやなかったんか!?
ええ!?」

「…せっ、せやし偶然、候補生の手伝いで借り出されたゆうてるやろ
大体鶏て何や!!
これは気合いや!!気合い!!」

「何が気合いや
私が何のために男前に産んでやった思ってんの!
許さへんで!」


「プッククク!!
髪ぜったいゆわれるおもた」

「………
えっと…
…何?」


いきなり口喧嘩を始める勝呂と女将


志摩は笑いを堪えて震えており、出雲が疑問を口にする


真夜と燐も頭上にハテナを浮かばせていた



「お、女将さん
子猫丸です
ご無沙汰してました」

「どーも、女将さん
お久しぶりですっ」


勝呂と女将の喧嘩に見兼ね、志摩と子猫丸は彼女に挨拶する


「猫ちゃん!
廉造も!
よう帰ってきたなァ
…無事で何よりや…」



「竜土のお守りも大変やったろ!」

「お守りいうな!!」

暖かく二人を出迎える女将


置いてきぼりにされた真夜、燐、しえみ、出雲はすっかり蚊帳の外だ


「あらっ
いやや、私ったら!
あちらは塾のお友達やね」




「初めまして
竜土の母です
いつもウチの息子-ボン-がお世話んなってます」


そんな真夜達に気付き、笑顔でお辞儀する女将…勝呂 虎子


どうやら勝呂の母のようだ


勝呂が「やめー!!」と言ってるが無視されている
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