青の長編

□猫又と守り神と人間と大好きだった主人と
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旧・男子寮…



一人の部屋の窓に誰かが侵入した


薄暗い部屋の中、影は迷いなくベッドに近づいていく


「…ん…?」



影と視線に気付いた真夜は、目を開けた


「………?
………
……え!?」


ぼんやりとその影…自分を見下ろす者を見ていた真夜だが、ハッと我に返るとすぐに起き上がり、降魔杖に手を伸ばした


距離を離そうにも後ろは壁だ



「…ど、どちら様ですか…?」

「……」



頭を心の中で叩き起こし、相手を見る


先に目が捉えたのは、角のような緑色のトンガリ頭だ


目の下には、最近見た事があるような酷い隈…

確か、同じくらいに隈が酷い人がいたような気がするが今は思い出せない


「………
…どうしてボクはここに来たのでしょう?」

「…は…?」


こちらが質問したのに質問で返された


「ボクは、兄上のところへ行こうとしてたのに…」

「……?
…兄上…?」

「…あ」


青年の言葉に戸惑う真夜

すると青年は、いきなり降魔杖を奪い、しみじみと眺め始めた


「…へー
これが降魔杖、なんですね」

「ちょ…!」

「じゃあキミが兄上が気に入ってるっていう人間の藤本 真夜ですか?」

「…!?
どうして私の名前を…!?」

「へー…
そうなんだ、はじめて見ました
どーりで美味しそうなニオイがしました」


動揺を隠せない真夜

けれど青年は何故か納得したようにウンウンと頷き、杖を戻すとそこらに投げ捨てる


「ハジメマシテ
ボクはアマイモンといいます」

「…?
…アマイ…モン…さん?」


自分と視線を合わせるように屈み、自己紹介する青年


どうやら敵意は無いらしい


「残念ながら、ボクは今忙しいので真夜のお相手はできません」


「…でも多分、また会えるような気がします」

「ちょ…!
ここ六階…!」



謎の言葉を残して窓から落ちるアマイモン


真夜は慌てて後を追い、窓の下を見る

だがそこにアマイモンの姿は無かった


「あの人は一体…!?」


落ちたら危ないのに、姿さえ見当たらない


「…ニオイ…?」


ふと我に返り、なんとなく部屋着を嗅ぐ


「…お風呂、入ろうかな…」




そう浴場室に向かおうと着替えを用意する真夜だったが、その直後に燐が部屋にはいってきて、それどころではなくなってしまうのだった
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