青の長編

□合宿と称号と友達と小さな勇気と
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「今日こそ…」




「絶対…」




「お友達つくる!!」



フツマヤの店にある橋の向かいの扉…



しえみは鍵を握り締め、扉の前で誓いを立てる




「今日こそ、ちゃんと挨拶するんだ
頑張るぞ!
見ててね、おばあちゃん…!」




勇気を振り絞りながら鍵を通し、扉を開ける


目の前は見慣れてきた廊下



すると話し声が聞こえた



(あ!
神木さんと朴さんだ…!)



それは真夜を除いた数少ない二人の女子塾生



(今日こそ
今日こそ)


「……こ」



「こんにち…」



二人を追いかけようと走り、挨拶の言葉を掛けようとする彼女だったが、下駄を履いている左足を捻らせる



「わッ!!」


「「?」」



そして盛大に転んだ



大きな物音に出雲と朴が振り向く



「あたた……」



痛みと失敗の恥ずかしさに顔を真っ赤にするしえみだったが…



「だっさ!」



神木は鼻で笑い、しえみに手を貸すことなく歩き出した


「大丈夫!?

ごめん…
ちょっと!
出雲ちゃんー」


「…
…!!」



朴はしえみを気にしながらも出雲を追う



そしてしえみはゆでダコになるくらいに顔を真っ赤にさせるが…



「…!
しえみちゃん!
大丈夫!?」

「!!」

「何やってんだ
そんなとこで…」



すると自分が先程開けた扉から真夜と燐がやってくる


しえみに気付いた真夜は慌てて駆け寄り、燐は扉を閉めて彼女に訊ねる



「怪我してない?
絆創膏あるけど…!」


真夜は、落ちたしえみの荷物を片しながらポケットから絆創膏を取り出す



「…燐
真夜…ちゃん…」




《なんや、その娘ら
お友達か?》


《と…
友達じゃ…ねぇ!》



脳裏に燐と勝呂の会話が過った



思い出したショックにしえみはうるうると涙を溜め始めた


それを間近で見た真夜はオロオロする


「し、しえみちゃん!?
だ、大丈夫!?
雪男君、呼ぶ…!?」



「な…
なんでもない…!」


「…え…
でも…」

「なんでもないの!」

「…そ、そう…」



しえみはバッと自分から立ち上がる



(私も強くなるんだ!)







ひとつの誓いを胸に…
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