青の長編

□父と悪魔と魔神と落胤と
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「ただいま〜〜〜」

「おかえり
どこ行ってたの」


朝、正十学園町――南十字男子修道院にて…


声に眼鏡を掛けた少年…奥村 雪男が扉を開けると、コートを着た少年…奥村 燐が入ってきた


彼等は藤本 獅郎が引き取った双子の兄弟であり、燐が兄で雪男が弟だ


「ハラ減った
メシある?」

「……
あるけど」


燐は何故かボロボロだ


「おう、燐
帰ったか」

「お帰り、燐」


「……」

「おかえり〜〜」

「おあー
ほにゃえふ」


「雪男君、私が入れるから」


「え?
でも、さっきので疲れてるんじゃ…」

「大丈夫」


獅郎や男達がテーブルを囲んで燐を迎える中、真夜は雪男から茶碗を取り、白米を入れる



『男子専用修道院』なのに何故女子である真夜がいるかというと“獅郎の娘”というのと、彼女の“生まれつきながらの厄”という事で特別に許可されているからだ


「職安行って朝帰りたぁ勤勉だな
なんか仕事決まったのか」

「あーー…
それが、その…」



獅郎の質問に何故か燐の歯切れが悪くなる



「…もしかして、燐君…
ケンカ、した…?
…怪我してるし…」

「!」

「なにッ!」


だが茶碗を置いた真夜の言葉で、彼の体が大きく揺れた


それを獅郎が見逃すはずもなく…


「燐ッ!
お前はどーしてそうケンカッ早いんだ!
…手ェ出す前にまず考えろって言ってんだろ!!」

「いだァ!
人のこといえんのかよ!!」

「なさけねえ!」


「り、燐君…
大丈夫…?」


「……!!」


獅郎がナイフを投げ、刃が軽く燐に刺さる


燐は涙目だ


「…コレを回せ!」


そんな燐に目もくれず、席に着いた獅郎は小さなメモを近くの修業員に渡す


メモが回されていく中、ストーブに置いてある鍋が少し湯気を起こし始めた


(…もうちょっと…かな…?)


真夜はストーブに近付こうと立ち上がる


「なんだよ」

それと同時に燐の手にメモが回った


「なにコレ」


用紙には料亭の面接内容が書かれている


「知り合いの料亭が見習いを一人欲しがっててな
お前、どうだ
その気があるなら、今日面接してくれるってよ」
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