青の長編

□引き寄せる者と祓う者と親子と神父と
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「はぁ…はぁ…!」




とある町中のとある場所…



もうすぐ高校生活を送る一人の少女は走っていた


彼女の周りには当たり前のように無数に飛び交う虫のような黒い物体…


だが少女はそれを振り払いながら何かから逃げている


そして彼女を追い掛けるは…



「ヒャヒャヒャヒャ!」



人ではあるが人とは思えぬ存在…



悪魔である



否、悪魔に憑依された人間だ


一見、人のように見えるが耳の先は長く尖っており、牙や尻尾が見えている



「ちょっとゴミ捨てに行っただけなのに…!
はぁ…はぁっ!」



逃げれば逃げる程に悪魔に取り憑かれた人間が寄ってくる


道を曲がれば、またも違う人間…悪魔が飛び掛かってきた


「わぁ!?」


少女は咄嗟に跳ねて避ける


そしてポケットから小さな小瓶を取り出した


「もらったあああ!」

「…っ!」



「ごめんなさいっ!」



小瓶の蓋を開けて悪魔に水を浴びせる少女



「ぎゃああああ!」


すると悪魔は悲鳴を上げ、人から抜けていく


だが少女の逃走劇は終わらず、また別の悪魔が寄る


「しつこいなぁ、もう!」


ひたすら逃げ続ける少女


やがて修道院に到着すると、少女は扉をバンッと勢いよく開けて中に逃げ込んだ



「…主は私を助け…」


そのすれ違い様に男が横切る



「私の盾である!」




「汝、途に滅びん!!」



男は唱え、悪魔に印を刻む


「ギャアアアア…!!」


その瞬間、悪魔は憑依していた体から抜き出され浄化される


悪魔に取り浸かれていた女は倒れて動かなくなった


気絶…しているようだ



「危なかったな」

「はぁ…!はぁ…
ゴホゴホ!」


「しかし何だな
毎度毎度大変だな」


「ごめん、父さん…」

「いやいや、なんの
無事でよかった」



謝罪する少女に神父は微笑み、彼女の頭を撫でる



彼女の名は、藤本 真夜…



物心ついた時から、悪魔やそれに取り憑かれた人間達に追われる毎日を過ごす



神父の名は、藤本 獅朗



真夜の実の父でありながら、最強の祓魔師の称号を持つ






真夜もその血を引いているのだが、何故か彼女の場合、祓うより呼び寄せてしまうようだ




それも彼女の意思とは関係なく
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