novel : two

□キスさせろ*ZXR
2ページ/2ページ

 ロビンは、この状態を頭で整理する。
 日中、ゾロはキスを迫った。ロビンはその誘いを無下にした。
 その後キッチンへ逃げたが、そういえば蜜柑畑にナミがいたのを覚えている。そして今。
 そうだ。そういう事か。成る程。

――航海士さんが入れ知恵をしたのね。

 頬が緩む。ナミに借りを作るまでも、ゾロは私とキスをしたいのか。ナミの事だ。ただでは教えまい。そこまでして…と。
 だが、同時に腹も立つ。そこまでして己の欲を吐き出したいのかと。
 ロビンは考え倦ねいた。そして出た結論。ちょっと意地悪をしようと悪戯心に火がついた。

「ご馳走様。有難う」
「い、いや…」
「それじゃ、お休みなさい」
「も、もう寝るのか?」
「ええ。何か?」
「いや…」
「読みたい本があるの」
「そ、そうか…」

ゾロは背中を丸め、視線は床へと落ちている。
ロビンの悪戯が相当響いているようだった。

――ちょっと意地悪し過ぎかしら

「ね、さっき何を言おうとしたの? 月がどうとか…」
「…」

 やはりゾロには雰囲気など求めるのは土台無理な話なのか。
 多少さみしい自分を感じたロビンだった。

「ご馳走様。今夜は話せて良かったわ。お休みなさい」
「…月が」
「…」
「月が綺麗だ。だが、お前の方がもっと綺麗だ。と伝えたかった。
 だが、もう止めだ。俺には無理だ、無理。
 正直に言うとな、ナミにけしかけられてよ。女心を分かれってな。
 だから計画練って実行した訳だが、駄目だ。
 こんな事してお前とキスしても意味がねェ。そういうモンは計画とかじゃねェだろうしな。
 俺は俺だし、作りモンの俺としてくれたって、これっぽっちも嬉しかねェ。
 だからいいんだ。もう。忘れてくれ」
「…あら、もういいの? 私とキスするのを諦めた、という事かしら?」
「んな事ァねェ。俺ァお前に惚れてっからな。こんくれェじゃ諦めねェよ」
「そ。良かった」

 ゾロの目の前に影が出来る。
 ゾロは見上げる。見上げる先にはロビンの顔が。
 そろりそろりとロビンの顔が近づいてくる。
 唾液を飲む、ごくりと音がする。ゾロはその音を異様に大きく感じていた。
 唇が微かに触れた。ロビンは目を閉じ、それを確認したゾロも緩慢に目を閉じる。
 ロビンの華の匂いが、口腔から鼻腔にかけて流れ込む。ゾロはその匂いを脳裏に焼き付けた。
 唇が離れていく気配がする。ゾロはロビンの温もりが離れていくのをさみしいと思った。
 離れていこうとするロビンのそれを、離さないと言わんばかりに、身体ごと追いかける。少しでも長くロビンのそれを感じるために。

「私は雰囲気もそうだけど、それだけじゃない。一言が欲しいの。
 いつもじゃなくていい。私を欲してる、と、そう感じさせてくれる言葉が欲しい。
 さっきの惚れてるって嬉しかったわ。その一言だけでもいいの。分かるかしら?」
「ああ、分かった。十分だ」
「フフ。今後が楽しみね。それじゃお休みなさい。ゾロ」

 自らの名を呼ばれ硬直するゾロ。やはり女心は分からねェ。
 真っ赤な顔は決して酒のせいではなかった。



 翌日、朝からロビンを追いかけ回すゾロの姿があった。

「なぁ、好きだからキスさせろ」
「嫌よ!!」
「んだよ、ちゃんと言葉にしてんじゃねェかよ」

 全くこの男は。
 逃げ回るのも飽き、ロビンは胸の前で両手を交差する。
 パッとゾロ自身に華が咲く。
 ゾロの関節という関節に生えた手が纏わりつく。

「クラッチ」

 静かにそれは成し遂げられた。



 その後、ゾロは毎晩勉強会と称したサンジのお説教を聞くハメになった。
 ロビンの願う雰囲気を、ゾロが醸し出せたのかは…ロビンだけが知る。









あとがき
 ギャグっぽくなってしまいましたが、結構好きな感じです。
 雰囲気って大切でしょうか。私はあまり気にしない方なんですよね。
 だから思いついた文なのかな。

Z「チャキ…」
T「オチがオチでしたね…。お怒りはごもっともで。大変申し訳御座いません」

最後までお読みくださって有難う御座いました。

07.07.05
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ