novel : two
□キスさせろ*ZXR
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ロビンは、この状態を頭で整理する。
日中、ゾロはキスを迫った。ロビンはその誘いを無下にした。
その後キッチンへ逃げたが、そういえば蜜柑畑にナミがいたのを覚えている。そして今。
そうだ。そういう事か。成る程。
――航海士さんが入れ知恵をしたのね。
頬が緩む。ナミに借りを作るまでも、ゾロは私とキスをしたいのか。ナミの事だ。ただでは教えまい。そこまでして…と。
だが、同時に腹も立つ。そこまでして己の欲を吐き出したいのかと。
ロビンは考え倦ねいた。そして出た結論。ちょっと意地悪をしようと悪戯心に火がついた。
「ご馳走様。有難う」
「い、いや…」
「それじゃ、お休みなさい」
「も、もう寝るのか?」
「ええ。何か?」
「いや…」
「読みたい本があるの」
「そ、そうか…」
ゾロは背中を丸め、視線は床へと落ちている。
ロビンの悪戯が相当響いているようだった。
――ちょっと意地悪し過ぎかしら
「ね、さっき何を言おうとしたの? 月がどうとか…」
「…」
やはりゾロには雰囲気など求めるのは土台無理な話なのか。
多少さみしい自分を感じたロビンだった。
「ご馳走様。今夜は話せて良かったわ。お休みなさい」
「…月が」
「…」
「月が綺麗だ。だが、お前の方がもっと綺麗だ。と伝えたかった。
だが、もう止めだ。俺には無理だ、無理。
正直に言うとな、ナミにけしかけられてよ。女心を分かれってな。
だから計画練って実行した訳だが、駄目だ。
こんな事してお前とキスしても意味がねェ。そういうモンは計画とかじゃねェだろうしな。
俺は俺だし、作りモンの俺としてくれたって、これっぽっちも嬉しかねェ。
だからいいんだ。もう。忘れてくれ」
「…あら、もういいの? 私とキスするのを諦めた、という事かしら?」
「んな事ァねェ。俺ァお前に惚れてっからな。こんくれェじゃ諦めねェよ」
「そ。良かった」
ゾロの目の前に影が出来る。
ゾロは見上げる。見上げる先にはロビンの顔が。
そろりそろりとロビンの顔が近づいてくる。
唾液を飲む、ごくりと音がする。ゾロはその音を異様に大きく感じていた。
唇が微かに触れた。ロビンは目を閉じ、それを確認したゾロも緩慢に目を閉じる。
ロビンの華の匂いが、口腔から鼻腔にかけて流れ込む。ゾロはその匂いを脳裏に焼き付けた。
唇が離れていく気配がする。ゾロはロビンの温もりが離れていくのをさみしいと思った。
離れていこうとするロビンのそれを、離さないと言わんばかりに、身体ごと追いかける。少しでも長くロビンのそれを感じるために。
「私は雰囲気もそうだけど、それだけじゃない。一言が欲しいの。
いつもじゃなくていい。私を欲してる、と、そう感じさせてくれる言葉が欲しい。
さっきの惚れてるって嬉しかったわ。その一言だけでもいいの。分かるかしら?」
「ああ、分かった。十分だ」
「フフ。今後が楽しみね。それじゃお休みなさい。ゾロ」
自らの名を呼ばれ硬直するゾロ。やはり女心は分からねェ。
真っ赤な顔は決して酒のせいではなかった。
翌日、朝からロビンを追いかけ回すゾロの姿があった。
「なぁ、好きだからキスさせろ」
「嫌よ!!」
「んだよ、ちゃんと言葉にしてんじゃねェかよ」
全くこの男は。
逃げ回るのも飽き、ロビンは胸の前で両手を交差する。
パッとゾロ自身に華が咲く。
ゾロの関節という関節に生えた手が纏わりつく。
「クラッチ」
静かにそれは成し遂げられた。
その後、ゾロは毎晩勉強会と称したサンジのお説教を聞くハメになった。
ロビンの願う雰囲気を、ゾロが醸し出せたのかは…ロビンだけが知る。
あとがき
ギャグっぽくなってしまいましたが、結構好きな感じです。
雰囲気って大切でしょうか。私はあまり気にしない方なんですよね。
だから思いついた文なのかな。
Z「チャキ…」
T「オチがオチでしたね…。お怒りはごもっともで。大変申し訳御座いません」
最後までお読みくださって有難う御座いました。
07.07.05