novel : two
□手の温もり*ZXR
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湖畔に沿ってそのまた奥へと進む。
ほどなくロビンの探し物は見つかった。
ポーネグリフには全く無縁な、ただの石。
何でも、その昔、この辺りには集落があったそうだ。
その名残りで、歴史的にはそう重要ではないと言う。
だが、ロビンは嬉しそうだ。過去の人々に会えるから、と、言う。
過去の人々が、何を考え、何を残し、何を伝えたかったのか。それを紐解くのが楽しい…と、顔を上気させ、ロビンは微笑む。
俺は過去なんざ、興味はこれっぽっちもねェ。だが、ロビンの言う通り、過去の紐解きは、際限のない事なのかも知れない。
ロビンの横顔を見、俺はそんなを考えていた。
「お待たせ、剣士さん」
「もういいのか」
「ええ、十分よ。さあ、行きましょ。付き合ってくれたお礼に、お酒は私がご馳走するわ。たら腹飲んで頂戴」
「な、んな気にすんな。付き合ったっつったって、ただ着いてきただけだし、俺は何もしてねェし。
酒も、俺が、その、何だ、あー…っと、酒は俺が…誘ったんだしよ。それは俺が払うから」
「そう? ふふ。それじゃ、お言葉に甘えてご馳走になるわ」
「ああ。どれ、行くか」
「ええ。帰りましょう」
自分でも信じられなかった。口が勝手に動いた、そうとしか思えない。
俺が、この俺がロビンを誘うなんざ、明日、雪が降ってもおかしくない。
腰を上げ、照れ隠しに頭をガシガシと大袈裟に掻く。先陣を切り、帰路につこうとしたら、掌を掴まれドキッとした。
「剣士さん、街はこちらよ」
情けなくて泣けてくる。
ロビンに帰る方向を訂正され、俺はなすがままだ。
だが、次にロビンから発せられる言葉で、俺は息を吹き返した。
「あなたの迷い癖は、私を必要としているみたいで、何だか嬉しいの。
私がいないとあなたは帰れない。即ち、私が必要ということ。フフ。笑わないでね」
ロビンが前を向いたまま俺に言った。
頼む。今はこっちを振り向くな。目は垂れ、口元は上がり、顔表面は真っ赤。綻んでいるだろう、俺の顔は見られなくない。
誰が笑うか。寧ろ、ロビンの言った事がそうなればいい、と、切に願う俺を笑ってくれ。
未だに俺の掌を握るロビン。
勿論、俺から取り払うなんて事はせず、寧ろこの掌を離すなと。出来ればこのまま刻が止まってしまえ。とさえ願っている。
なあ、ロビン。
俺はこんなにお前が好きだ。
お前は知らないだろうが…な。
掌を繋いでいる手首同士を切れない紐で縛ったら、お前は怪訝に思うだろうか。
空いている掌を使って、お前をこの胸に抱き止めたら、お前は不信に思うだろうか。
俺は神を信じない。だから、この大地、この大空、この大海原に、心から誓おう。
ロビンを永遠に愛する。
この先、何が起きようとも、俺はお前を守ろう。
天と地がひっくり返ろうとも、俺はお前の傍にいよう。
だから、俺の愛を受け取ってくれ。
俺の事を愛してくれ。
ギュッと掌に力を入れる。間を置かずに握り返してきた手の温もり。
ロビンを見遣る。ロビンも俺を見射る。
「ロビン、俺はお前が…」
あとがき
何だか無用に長文になってしまいました。
今回、この文ではロビンちゃんの気持ちをハッキリとは書きませんでした。
要はゾロの片想いですね。
その後、ゾロはロビンちゃんに想いは伝えられたのでしょうか?
硬派なゾロの事だから、核心には触れられず、誤魔化したかもしれません。
反対に、掌を握り合っていますので、勢いに乗って伝えられたかもしれません。
そのご判断は、皆様に委ねます。
しかし、これだけは絶対。
“バッドエンドは有り得ません”
Z「俺はロビンを全身全霊で愛する自信があるぜ」
T「当たり前ではござりませんか!?」
最後までお読みくださって有り難う御座いました。
07.05.31