novel : two

□泪*ZXR
2ページ/2ページ

 私はもう死にたかった。
 死に行く運命を切り開く自信もなければ、力も、気力もなかった。
 逃れられない運命に、何故立ち向かわなければいけないのか。
 既に私には死神が取り付いていた。
 大きな鎌を、今にも振り上げそうだった。

 でも、死神は消え失せた。
 仲間が光を、輝きを私に与えたから。
 そして、死の代わりに生を与えられた。
 ルフィに生きろと言えと言われ、生に対して自信が持てた。
 やはり、サウロの言った事は本当だった。証明できた。
 サウロに胸を張れる仲間。

 私は生きている――


「何考えてんだ? また悪い事考えてんじゃねェの?」

 背後から、愛おしい彼の声が聞こえる。
 改めて、生を意識した。
 新しい船。仲間がいる。私は此処にいる。実感の極みだ。

「剣士さん…。ありが…」
「言うな。もう聞き飽きた。何べん言った?」
「あなたにはきちんと言ってないわ。…此方へきて」

 舌打ちして、彼が近づいてくる。
 真後ろに立ち、座っている私を見下ろしている。
 後ろを向かなくとも、気配で分かる。
 いいえ。彼の事だから、手に取るように分かる。

 隣に座るのかとばかり思っていた私は、心底驚いた。
 彼は背後からふわりと私を包み込むように抱き締めた。
 私の右肩に顔を埋めるゾロ。

 言葉は要らない。
 その暖かさで、私は満足。

「てめぇ…もう何処へも行くなよ」
「行かない。何処へも行けない。もう此処しか、あなたしか私にはいないの」
「それでいい」

 泪は出なかった。今までは。

 彼が抱き締めてくれたら、魔法のようにほろほろと、ビー玉のような泪の粒が一つ、また一つと零れ。

 ああ、私は生きている。
 そして暖かい背中は、生きろと叫んでいるよう。
 私には彼の叫びが聞こえた。確かに。

 これから、私は何処へ行くのだろう。
 生を貰い、暖かさを貰い、泪も貰った。

 これから、私は何処へ行くのだろう。
 答えは、これから見つけよう。
 背中から私を抱き締めてくれる、彼と共に。

















あとがき

 エニエス・ロビー決戦から間もない頃の設定で。
 甘さは少ないですが、ゾロがロビンちゃんの背中から抱き締める場を書きたくて。
 唯一の未練=ゾロとの約束は嘘でしょう(汗) ロビンちゃんの未練はリオ・ポーネグリフでしょっ(汗)
 文を書く上で、そうなってしまった事をお許しください(合掌)
 
Z「ロビンの“生きたい”はよ、何だかルフィに言ってるみてェで何かな」
T「おいおい、未来の大剣豪が、そんな小さい事言ってんじゃないよ! 
 …確かに、うちのルフィはロビンちゃんの事知り尽くしてるきらいがあるわね。
 …そんなに落ち込むな。大剣豪」


最後までお読みくださって有難う御座いました。

07.05.23
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ