novel : one

□Sweet Time*ZXR
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「そうそう、型はいいぜ。飲み込みが早ェな、流石だ。」
「ふふ、お褒めに預り光栄だわ。でもごめんなさい、剣士さんのトレーニング時間を潰してしまったわね」

 何を言うのかと思えば、たわいもない事を。これだから困る。お前の為じゃなく、俺の為の有意義な時間なんだ。

「鍛練なんざいくらでも出来る。寧ろ海上じゃそればっかりだからな」
「ふふ、ありがとう。さ、お昼にしましょ」

 すぐ温めるわ、と髪を束ねながらキッチンへ向かう。その後ろ姿が堪らなく愛しい。マジで食らいつきてェ。
 俺がキッチンの扉を開けると、テキパキと飯の支度をしていた。エプロン姿を初めて見た。俺の為のその姿に多少の興奮を覚える。

「ここにきてから料理するのは何度目だ?」

エプロン姿を俺以外に晒した事はあるのか。子供みたいな嫉妬心からか、つい聞いてしまった。

「そういえば初めてね」
「そうか」

 ロビンに気付かれぬよう、そっぽを向いて答える。出来るだけ素っ気無く。そうでもしないと、締まりのない顔を見せる事になるからだ。俺の顔はどんなだ? にやけてるか? 目尻がたれてるか?
 たったこれだけの事で跳び跳ねる程嬉しいとは。完全にイカれてやがる。苦笑モンだ。


 昼飯は思った通り美味かった。料理自体は流石一流コック。申し分ない。
 しかし、それ以上に目の前にいる、漆黒の瞳のロビンがいる事だけで数段美味く感じるから不思議だ。
 くそコック、今日はお前の料理も霞んじまう。悪ぃな。

「午後はどうする?」
「そうね、剣士さんはまずお昼寝でしょ? 付き合うわ」
「ああ? 付き合うったって…」
「傍で本でも読んでるわ。駄目かしら」
「駄目な訳あるか」

 ロビンの頭をくしゃりと乱暴に撫でる。嬉しいとロビンは顔を赤らめ、微笑む。


 午後もいい陽気だ。
 メインマストに凭れ本を読むお前と、お前の隣を陣取り、腕を頭の後ろで組み横になる俺。
 いつもなら数秒で眠りに落ちる俺だが、今日は寝るのが惜しい。極限まで耐える。
 ちらりと横にいるロビンの表情を盗み見る。黒髪が靡き、一房の髪束が唇に引っ掛かる。それを払う仕草が何とも妖艶だ。
 目を閉じると、ベージを捲る音が子守唄のように聞こえる。
 不意に胸に重力がかかる。目を薄く開けると、そこにはロビンが俺の胸に頭を乗せているのが見えた。
 丁度心臓の上にロビンの耳が当たっている。心臓が早打ちする。ロビンにも聞こえているはずだ。それでも構わない。
 ロビンと触れていたいからな。俺の顔、赤くなってっか? 妙に冷静に考える。しかし、思考は止まり、ただただ胸の熱さにロビンを感じた。



 ね。とロビンが俺を起こす。何だと答えながら、未だ俺の胸を枕にしているロビンを見る。
 目前にロビンの顔が迫っていた。どきっとし、硬直したその瞬間、唇に柔らかな感触を覚えた。
 ロビンの匂いがする。脳に直接響いてくるロビンの匂いを、忘れぬように記憶しようと細胞が働きだすようだ。
 啄ばむ口付けの余韻に浸りながら、しかしふふっと微笑みながら離れようとするロビンの手を掴んだ。
 もう我慢できねェ。限界だ。

「俺はお前が好きだ」
「私も。私もあなたと同じ想いよ」



「ロビーーーーン、ゾローーーーー」

「第一陣がご帰船ね」
「そうみたいだな」

 未だお互いに離れようとしない。このまま、このままずっといたい。そうお互いの目が語り合っている。

 ああ、この瞳だ。この漆黒の瞳に吸い寄せられる。

 予感がする。ロビンを手放せない自分。一人占めしようとする自分。嵌っていく自分。一人焦る自分。

 それでもいいさ、惚れちまったもんは仕様がねェ。今更ナシに出来るかよ?














あとがき
 激甘です〜〜〜♪ ああ、妄想するだけで自分が幸せになるのはどうしてですか? 
 この二人、本当に本当にお似合いです。寧ろ今日にでも結婚してくれ、後生だから。とさえ思ってしまう私は変態ですか?

Z「結婚…は、いきすぎじゃねェか?」
T「いやいや、寧ろ遅いくらいじゃないですか? 旦那〜〜」

最後までお読みくださって有難う御座いました。


07.04.29
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