novel : two

□懸想の花束*ZXR+L&S
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 今日もいい天気。太陽がメリーを、クルーを、私を金糸雀色に染め上げる。
 束の間の休息。いつ起こるか分からない闘争と海軍の追跡。昨夜も海賊と海軍が同時に現れ、戦闘を余儀なくされた。
 闘いに余裕はあった。同時に何がきても、このクルー達となら絶対に逃げ切れる。
 だが、戦闘には傷が付き物。昨夜も数人、船医さんの手当てを受けている。私も然り。
 直に戦う皆とは違い、私は長鼻くんと同様、遠方戦が得意だ。だが、飛んでくる物には弱い。それが銃弾でも砲弾でも人間でも。
 昨夜は乱れきっていた。海軍からは砲弾や銃弾。海賊からは銃弾やナイフや有ろう事か、人間が飛んできた。
 銃弾やナイフは予想が付く。真直ぐに飛んでくるのだから。だが、人間は厄介だ。勢いをつけ、起用に曲がってくる。
 違う方向へ飛ぶのかと思ったら、予想を覆し真横の私に飛び掛ってきた。
 敵船の船長が叫んでいたのは分かっていた。手を生えさせる、あの女能力者を先に潰せ。そう叫んでいたから。
 だが、飛んできた男は明後日の方向に向いていた。肩透かしにあったように、意識を別の方向へと、身体と共に動かした瞬間、有ろう事か、男はこちらに向きを変え、飛んできたのだ。
 飛びながらナイフを飛ばし、本当に起用だわ、と感心した程。
 ナイフが当たる直前に手を生やそうと思った矢先、私の前に立ち塞がり、阻止してくれた男がいた。
 私のことを一番に考えてくれている剣士。彼が男を倒し、血を浴びせた。
 直後、私へと身体の向きを変え、叱咤した。

「何ボーっとしてやがる!! 死にてェのか!!!」
「ごめんなさい、まさか方向を変えるとは思わなくて」
「おれの傍にいろ!!」
「承知したわ」

 その後、私と彼は共闘し、背中を預け合った。時折飛んでくる男たちはすべて血を浴びさせ、床に転がった。
 航海士さんのお陰で海軍からも逃げ仰せ、そして白みかけた空が朝を運んできた。



 今朝は皆ぐったりしていた。朝食後に甲板にいるのは私とルフィだけ。
 コックさんは己の身体に鞭を打ち、昼食の仕込みに懸命。朝食作りだって大変だったでしょうに。
 その他クルーは、それぞれ部屋へと散っている。
 ルフィは元気だ。昨夜の闘争が無かったかのような振舞い。本当に太陽のように降り注ぎ、こちらにも元気を分け与えてくれているよう。
 そのルフィが何かを考えているように目を寄せ、額に手を当てて、デッキチェアで本を読んでいる私のところへとやってきた。

「なあロビン、これ、傷かな?」
「どれ、見せて」

 ルフィに座ってと目で促すと、私の足元のすぐ真横に座った。
 ルフィの前髪をかき上る。綺麗な額。少し広いのね。近くにいるだけで太陽のふんわりとした柔らかい匂いがする。

「これなんだけど。痛くもねェし、痒くもねェんだ」
「あら、これはにきびね。思春期特有の皮膚炎よ。毛穴に詰まった皮脂が原因なの。だから怪我ではないわ」
「そっか。なァんだ。驚いた〜〜」
「ふふ。船医さんに軟膏をもらって塗ればすぐに治るわよ。でもルフィの額は広いのね」

 そっとルフィの額から手を退く。名残り惜しいが、いつまでも触れている訳にもいかず。
 でも、なんだか元気を分けてもらえた気がして、私は顔を無意識に誇らせた。

「ロビンはねェのか? そのビキニとかいうやつ」
「……にきびよ」

 反対に言うとそんな大胆な言葉に変化するのね、などと考えていると、今度はルフィが私の前髪をかき上げた。

「お前の額も、なんだ、でけェじゃん。お、発見。これビキニだろう」
「え? うそ、本当?」
「あ、違うなこれ。血の塊じゃねェか。昨夜のか?」

 カリッと爪で引っかくと、ポロッとそれが簡単に剥がれた。紛れもない血の色。時間が経ち赤墨色に変色している。
 ちく、と痛みが走る。大した事はないが、指で少し押さえてみる。緩慢に指を離し、先を見るとやはり血が滲んでいる。
 瘡蓋は自然にぽろりと落ちるまで、無理に剥がさない方が治りが早い。分かっていても、どう仕様もなく気になる。
 意外に傷は深いらしく、つつ、と頬を伝って血が流下した。
 ポケットにあるハンカチを出そうと、手を添えたそのとき。










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