novel : two

□coffee*ZXR
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 遺跡発掘に忙しいロビン。毎日朝早くから下船し、帰船は他の奴らが寝静まってからだ。
 今日も帰船したのは、日付が変わってから。
 見張りはおれじゃないが、ロビンが心配で、鍛練を口実に甲板でロビンの帰りを待つ。
 鍛錬は苦ではない。寧ろ己の身になるし、酷使した後の疲労感は意外に心地良い。
 そうして、おれは錘を両腕に巻きつけ、身体を自ら痛めつける。
 そうしている内に、ロビンがふわりと甲板に下り立つ。常のリュックを肩に背負い、泥と埃で汚れた顔でおれを確認すると、即座に笑みを零す。
 その表情を見るのが好きだ。自分の夢に向かって生きるロビンは表情が輝いている。妖艶でいながらも幼さを醸し出している。
 そんなロビンの頭をくしゃりと優しく撫でる。

「風呂、空いてるぞ」
「ありがとう、汚れてしまったからすぐ入るわ。……あなたも一緒に入る?」
「ばッ!!! アホかッ!!!!」
「ふふ。冗談よ。それじゃお先に」

 年が上なのか下なのか分からなくなる。冗談を言うロビンも、それはそれで好んでいる。偶に度が過ぎるときがあるが。
 風呂から出て、入れ替わるようにおれも入った。残り湯に卑猥な妄想が頭を過ぎる。己の煩悩に叱咤し、素早く汗を流して風呂を後にした。
 そのまま上気する身体を気にすることなく、キッチンへと向かった。ロビンは、コックが残しておいた夕飯を食べている
 そのロビンを肴に、傍らで酒を煽る。風呂上りで、未だ上気しているロビンは、目の遣り場に困る程艶かしい。

「明日も遺跡か?」
「ええ。明日も行くわ」
「明日はおれも行く」
「……大丈夫よ。あなたはあなたの遣りたい事を……」
「だからだ」
「…………」
「なんか問題あるか?」
「……いえ、問題はないわ。だけど……」

 ったく、この女はどうしておれにさえ気を遣うのだろうか。
 おれの遣りたい事は、お前の傍にいる事なのに。

「チッ、おれが行けば迷惑か?」
「そんな事はないわ。でも……」

 大袈裟に酒瓶をテーブルに置く。大袈裟な音がキッチンの壁に反響し、存外耳元に響く。ちゃぷんちゃぷんと瓶の中の酒が水面を踊る。

「……もういい。分かった」

 酒瓶を手に持ち、キッチンを後にする。扉を無遠慮に開け、ロビンの視線を感じながらも、進める足を止めようとは思わなかった。
 こんなにもロビンが好きなのに、ロビンは素っ気なく、おれをテリトリーに入れない。もどかしくて苛々する。
 どれだけおれが毎日お前の事を心配してると思っていやがる? 心配で心配で昼もろくに寝られねェのに。
 男部屋へ下り、ハンモックに飛び乗る。眠気は、当たり前だがこない。くる筈もない。
 頭は興奮し、寝るどころか寧ろ目が冴えている。先ほどから呑んでいた酒も、もう味すら思い出せない。
 こんなにロビンに依存するとは、己自身が予想していなかった。
 好きになったらもう止まらなかった。愛と自覚してからは、気持ちが募る一方で、今までに味わった事のない感情に右往左往した。
 心配や嫉妬。このおれが。剣しか能のない、このおれが、だ。だが、ロビンを寵愛するのは隠せない事実。
 だから。だから、ロビンの素振りに納得がいかずに腹を立てる。おれが思うより、ロビンはおれを愛してはいないのではないか。
 そんな馬鹿な事を考えたりする。女々しいおれに苦笑と自嘲が入り混じる。

―――ロビン。ロビン。ロビン。

 頭ん中はロビンで埋め尽くされている。畜生、こんなにお前が好きなのに!!!
 当分眠気は襲いそうにない。ハンモックから下り、埃を纏うソファーに座る。
 転がっていた酒をぐっと煽り、目線は宙を舞う。

―――あいつ、ちゃんと部屋に行ったか? もしや、キッチンで寝てねェだろうな?

 無下にされても心配は心配だ。そう思う自分にまた苦笑が漏れる。










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