novel : two

□それは血となり肉となり*ZXR
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 最初の内は、泣かない日はなかった。毎日屋根もないところで朝がくるのを脅えながら待った。猫のように背を丸め、自身を抱きかかえ、震えながら。
 悲しみを宿した瞳がその色を捨て、無になるのにそう時間は掛からなかった。


 緩慢に自身の身体を起こし、虚ろな目でゾロを見る。

「この手は血に染まり、今では真っ赤に色付いた手が見えるの。これが懺悔…なのかしら」

 両手を目の前に翳し、ロビンは凝視している。
 表情は複雑だ。泣き出しそうな、苦笑のような、それでいて無表情のような。
 その両手首を、ゾロは自身の両手で掴む。
 ロビンはゾロを見遣り、この行動の意味を問う目線を返した。
 ゾロはにやりとロビンを見返し、自身の下唇を思い切り噛んだ。
 唇からぽたぽたと血が滴り落ちる。相当な力を込めて噛んだようだ。
 その血を自ら啜り、口内で溜めてからロビンの両手にぺっと吐き出した。
 辺りが独特の錆の臭いが漂う。
 ロビンは驚き、両手を引っ込めようとするが、ゾロの力の前ではその行動も無意味だ。
 ゾロはロビンの両手を自身の両手で覆い、指を絡めた。

「なに? お前の手は血に染まってるって? そりゃそうだ。おれの血でお前の両手は色付いてっからな」

 口角を上げ、今にもくくっと笑い出しそうな表情。
 その表情を見、ロビンは呆気に取られた。
 だが、その表情もすぐに崩れ、穏やかな瞳にゾロが映し出されている。
 潤んだその目に、涙が集まり、今にも頬を伝って流れていきそうだ。

「お前は過去に囚われすぎている感がある。もっと気楽にいけよ」
「無理だわ…。けれど、あなたの前ではそれも出来る気がする」

 手を離そうとするゾロに対して、ロビンは頑なに力を緩めなかった。
 その意思を受け取り、繋いだままゾロはロビンの前にどさっと座り直し、胡坐をかいた。
 しばし、見つめ合う二人。
 沈黙には慣れている二人だから、互いに目を逸らそうとはしない。
 沈黙を破ったのはロビンだった。
 身体を浮かせ、ゾロの顔に自身の顔を近づける。
 その距離が無になろうとした時、おもむろにロビンはゾロの唇を舐めた。先ほどのゾロの傷を愛しそうに、癒そうとするかのように。
 キスをするのだとばかり思っていたゾロは、舐められた瞬間、閉じていた瞼をかっと見開き、顔を赤らめた。










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