novel : two

□紡ぐ未来*ZXR
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 波に揺られ、大海原を進むサニー号。
 新しい仲間を引き連れ、より一層賑やかな麦わら海賊団。
 水の都を発ってから数日が過ぎた。激動の日々もまだ記憶に新しい。
 日中の喧騒も嘘のように、今は静寂に包まれている。
 日付が変わるまではまだ少しある。芝生の上に裸足で下り立つロビン。ミュールを両手に持ち、芝の感触を楽しんでいる。
 フォアマストの真上には、ジムを兼ねた展望台がある。ロビンは星を眺めようと展望台へと登った。

――今夜は七夕。天の川が見れるわ。もしかしたら、運がよければ流星も降り注ぐかもしれない。

 日の中、天文学にも詳しいロビンは、クルー全員にその事を伝えた。
 クルーも皆楽しみだ、等と口々に言ってはいたものの、案の定今、この時間になっても誰も来なかった。
 一番楽しみにしていたチョッパーも、そこに姿はなかった。

「フフ、皆日中はしゃいでいたものね。チョッパーも楽しみにしていた様子だったけど、時間が時間だから寝てしまったのね。
 仕方ないわ。せめて感想くらい教えてあげなくちゃ」

 そうロビンは独り言ちた。
 天体望遠鏡を覗き、夜空を見渡す。
 未だはっきりとしない曇り空だが、ナミの予報ではそろそろ晴れてくるらしい。
 そう思っていた矢先、雲がどんどん足早に去って行く。今まで覆っていた雲がサニー号を追い越し、瞬く間に快晴になった。
 ほどなく梯子の擦れる音が聞こえてくる。
 無遠慮で豪快な足音。ゾロだ。間違いない。

「よお、いたのか」
「ええ。天の川を見にきたの。あなたは?」
「おれは身体を動かしにな」
「そう」

 嘘だ。ロビンはそう感じた。トレーニングをするなら、ゾロは着替えを持参する筈だ。
 今夜はそれがない。それどころか、着替えの代わりに酒瓶を持っている。
 ロビンは嬉しかった。
 日中クルー全員に伝えたときには、ゾロは眠っていたのだ。
 空寝をし、聞き耳を立てていたのだろう、この事を頭の片隅に置いておいてくりたのだ。

「ありがとう、ゾロ」
「なっ、何がだ?」

 頭をがしがしと掻き毟しりながらそっぽを向く。照れ隠しだと分かっているロビンは尚更嬉しかった。

「ね、トレーニングする前にここを見て」

 レンズを指差す。
 ゾロは身体を屈み覗くと、そこには星の大群が幾つも集まり、まるで河のように見えた。

「すごく綺麗でしょう」
「おわっ、すげェな。河みてェになってんぞ。ほほう」
「起きていた役得ね。一年に一回しか見れないの。まさに特別な日ね」
「ほー、一年で今日だけか。儚ェな」
「そうね。でもまた来年も見られるわ」

 ゾロはロビンをじっと凝視する。凝視するのは辺りが暗いだけの理由ではない。
 にこやかに笑みを溢し、ロビンはまた来年も…と言った。“来年も”と。










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