novel : two

□以心伝心*ZXR
1ページ/1ページ

 視線は感じる。
 だけど視線は合わない。



 ロビンはいつもの場所で、本を読んでいた。
 その分厚く大きな本を、すらすらと頭に入れる。
 ロビンは本を読むのが好きだった。
 活字を眼で流れるように見、さらりと頭の奥へ押し込む。
 本から得た知識を身にする。
 それも一つの心地良さなのだ。
 読み出すと止まらない。傍らに誰がこようとも。

 その時である。いつもの視線を感じたのは。
 背中から感じるその視線は、温かく慈愛に満ちている。
 ロビンは決してその視線が嫌ではない。寧ろ視線を向けられ、愉悦である。
 だから、その視線を投げ掛ける方へと目を向ける。
 だがいつも視線は合わない。
 また読書に戻る。
 そしてまた視線を感じる。その繰り返しだ。



 夜の甲板。風呂上りのロビンは、一人船尾で夜風に当たっていた。
 夜風はひんやりとロビンの頬を撫でていき、そして通り過ぎる。
 風呂上りの火照った身体をも冷ましてくれる。
 生乾きの髪がひらりと舞う。絹糸のようなそれが、夜風に踊らされている。
 その絹糸を、真後ろにいた人物に、不意に掬い上げられる。
 後ろを振り向かなくても、ロビンには誰だか分かっていた。

――ゾロ――

「…視線を感じたわ。…でも合わせてはくれないのね?」
「視線を合わせなくても俺だと分かったか?」
「勿論よ。私はあなた。あなたは私。以心伝心って知ってる?」
「ああ。黙っていても、互いが何を考えているか分かる。通じ合う事。だろ?」
「そう。正に私たち」
「そうだ」

 ゾロはロビンの右掌で遊んでいる一握りの絹糸を、鼻先に押し遣る。
 左腕はロビンの顎下を通り、胸へと伸びている。

「私とあなたは以心伝心。私のすべてはあなたのすべて。私の血はあなたの血。私のここは」

 ロビンはくるりと体勢を変え、ゾロの真正面へと向く。
 ゾロの右手を両手で救い上げ、自身の胸へと導く。

「私のここはあなたのもの」

 ごくりとゾロの喉が吠える。
 それを合図に顔と顔が近づく。

「あなたのここは?」

 ロビンはゾロの唇を眼で見、そして指で摩る。

「…お前のだ」

そしてどちらともなく唇が触れ合う。

以心伝心。
――無言でも心が通じ合うこと――

その言葉の通り、二人には心があれば、言葉は要らない。
お互いがお互いを、本能で感じとるのだから。











あとがき

 視線を巡らせるが、決して絡ませないゾロ。
 視線に気がつき、ロビンちゃんは視線の出所へ目を向けるが、視線の先には目を逸らすゾロがいる。
 なんだろう、書いていてゾロはロビンちゃんを試しているのか? と思いました。(自分で書いてて疑問もヘンですが)
 ゾロとロビンちゃん、二人とも落ち着いていて雰囲気似てると思います。だから考えてることって同じでは? と思いまして。
 以心伝心と考えてることが同じっていうのは、また違うのですが、今回はお互いが何もいわなくても分かってる、という事を書いてみました。

Z「以心伝心か。俺たちにぴったりだな」
T「本当か? お前は本当にロビンちゃんの気持ちが分かるのか?
 ゾロは単純明快だから、考え読み取りは簡単だが。ププ」
Z「(チャキ…)」
T「…柄から手をお離しなさい(汗)」

最後までお読みくださって有難う御座いました。




07.05.31

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ