novel : one
□Call a name again*ZXR
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ロビンは、ルフィだけを名前で呼んでいる。ルフィを除く他のクルーは肩書きや愛称で呼んでいる。
ゾロは剣士、サンジはコック、ナミは航海士、ウソップは長鼻くん、チョッパーは船医さん。ルフィも以前は船長と呼ばれていた。
その事が、ゾロは気になって仕方がなかった。
――何でもなかった。今まではどうも感じなかった。
だが、ルフィが名前で呼ばれるのを端から見ると、心がざわざわする。
あいつにとっては、別に大した意味はないのかもしれない。寧ろ、意味がない方がいい。
こんな感情のまま航海を続けなければいけないのだから。
まるで拷問だ。
俺はルフィみたいに、包容力はない。コックみたいに、女を悦ばせる言葉を言える訳でもない。
ウソップみたいに、饒舌に笑わせる事も出来ない。チョッパーにしてみたら、傍に居るだけで癒す存在だ。
それは俺には絶対無理な事だ。存在だけで癒す等とは。
だから、俺はロビンにとってただの一クルーなだけである。
それがもどかしい。ロビンの特別でありたい――
ゾロは、そう強く思うようになっていた。
「剣士さん?」
気が付くと、ゾロの前に…正解に言うと、ゾロの目の前にロビンの怪訝そうな顔があった。
どうやら、思考をフル回転させている間に、ゾロはロビンを知らず知らず射るように見つめていたらしい。
それはそうだ。ゾロがたった今まで考えていたのはロビンの事なのだから。
「ロビン」
「どうしたの? 名前で呼んでくれるなんて、初めて…よね」
「ロビン」
「剣士さん、本当にどうしたというの?」
――俺の名前を呼んでくれ――
口に出かかったが、ゾロはなんとかグッと堪えた。
事実、ゾロはロビンに名前で呼ばれたい。しかし、それを告げる事も出来ず、悶々とする。
だからといって理由にはならないが、ゾロは先走って行動を起こした。
「…っ……ん…」
ゾロは自分を抑えられない。
ロビンの腕を掴み、俺に引き寄せ、唇を奪った。
「一体どうしたの?」
「何でもねェ」
「何でもない訳ないでしょ?」
「うるせェ」
「全く、どうしたというのかしら」
「もう黙れ」
ロビンに背を向け、ゾロは不貞寝をした。これ以上ロビンの顔を見ていると、何をするかゾロ自信でも分からなかったからだ。
ロビンが去って行く。靴音が遠くなる。
ぶはぁー。
ごろんと仰向けになる。
ゾロは真っ青な、雲一つない晴天を仰ぎ見、、大の字になって一息つく。
――なあ、ロビン。いつか、俺の名前を呼んでくれ。“ゾロ”と。――
ゾロの思考はそこでぷっつり途切れた。
静かな寝息を立て、ゾロは夢の中へと旅だっていた。
続