novel : one

□白衣の天使*ZXR
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 ロビンが本を読んでいる。いつもの事なのだが、今回の本はかなり分厚い。
 辞書ぐらいの厚みで、辞書の三倍はあろう大きさ。
 今日の朝から読み耽っている。因みに、今は夕飯後だ。
 俺は、ロビンの隣を陣取り、チビチビと酒を呑んでいる。
 夕飯の後片付けをしているコックが、さっきから此方をちらちら見やがる。
 然も俺が邪魔だと言わんばかりに睨みやがる。
 俺は気にしない。なぜなら、ロビンは俺の女だからだ。
 ふんと鼻を鳴らし、目線をロビンに移す。
 俺が言うのもなんだが、ロビンは本当にいい女だと思う。鼻筋の通った顔。
 だが漆黒の瞳は俺しか映さない。それが優越感を引き出す。

「おい、いい加減にしたらどうだ?」

 ロビンからの返事は、予想通り、ない。
 本を読んでいる間は、周りの喧騒を受け付けない。
 悔しいが、俺の事もまた然り。

 不意にロビンが本を閉じた。

「剣士さん、肩は凝っている?」
「は?」

 いつも唐突だ。流石に今回の言葉は、意味はあるのだろう。
 だが、今は凝ってない。そう伝えると、今度はあろうことか、クソコックの方に身体を向き直した。

「コックさんは? 肩は凝ってない?」

 反則だ。絶対反則だ。エロ眉毛が凝ってない、など言う筈がない。
 凝ってなくとも、ロビンの申し出を断る筈もなく。
 しまった、と思った。既に後悔する、忌々しい自分に苛々する。
 取り敢えず様子をみる。肩がどうしたっていうのか。何をするつもりなのか。

「ロビンちゅわ〜〜〜ん、今日は特に肩が凝って、大変なんだよ〜〜」

 出た。このデタラメ眉毛が。くねくねしやがって、気持ち悪ィ。

 ロビンは、本当?と目を輝かせながら、コックの真正面に立った。
 コックの両肩に、ロビンの両手が触れる。

「おい! ロビン! 何のつもりだ!?」

 思わずガタッと、けたたましく椅子の音を立てて、立ち上がってしまった。
 だが、そんな事は構っていられない。何が良くて自分の女が他の男に触る状況を許す?
 俺はそんなに出来た男じゃねェ。
 ロビンの腕を掴み、ロビンの動きを制する。

「んだァ? マリモでも妬くのか?」
「うるせェ、黙れ。ロビンもいい加減にしろ」
「あら、どうしたの? そんなに怒って」

 そんなに怒ってじゃねェだろうが。ったく、人の気持ちも知らねェで、と毒を吐く。

「いいから、離せ」
「違うのよ」

 何が違うんだ…と言い終わる前に、ロビンは動いた。







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