novel : one
□A promise*ZXR
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久しぶりの上陸だ。各々仕入れに冒険にと下船する中、俺は船上では出来ないトレーニングをするべく、崖道へと向かった。
途中、何故だか知らんが街中に入り込んだが、どうにか険しい道になってきた。
そうこうしている内に、切り立った崖にたどり着き、立ち止まった。
汗をかいた身体に、心地良い風が吹き抜ける。
海を眺めると、大海原に眼を奪われる。
水平線の彼方には、俺たちが望む何かがあるのだろうかと思考を巡らす。
クルーそれぞれ目的があり、皆それに向かって走り続けている。
ルフィは海賊王、ナミは世界地図を描くこと。
ウソップは勇敢な海の戦士、コックはオールブルーを見つけること。
チョッパーは何でも治せる医者。
アイツは…何だ? アイツの目的って何だ?
この頃よく目が合うあいつ。気になって仕様がねェ。
俺には決して見せない笑顔を、他のクルーには見せている。
俺がいないところでは自分を曝け出せるみてェだ。
しかし、俺が近づくと、必ずと言っていい程顔が強張る。
それが気に入らねェ。そう思う自分すら気に入らねェ。
「剣士さん」
その声。振り向かなくても分かる。今正に頭ん中で考えていた女だ。女にしては低く、しかし脳に響く声だ。
「…どうした、迷ったか?」
「貴方からその言葉を発するとは…。驚きだわ。ふふ」
「馬鹿にすんな」
「ごめんなさい。迷ったのではないの。貴方を街中で見かけたから、追ってきたのよ」
「寝首でもかきにきたのか?」
「…」
黙るな。何故何も言わない。お前ェは敵だった女だ。困る事など何もねェだろうが。
俺は段々と苛ついてきた。こいつに…いや、自分にか?
黙りこくるこいつではなく、こいつを蔑むような言葉を発した俺に苛ついているのか。
「…悪ぃ」
「…いいえ、いいの。謝るなんてらしくないわ」
海を見渡し、遠い目で水平線を眺め、お前は何を考える? その華奢な身体で20年を闇で生抜き、そして何処へ行く?
「ね、あなたの夢は?」
「…何だ? 突然」
「ふと思ったの。差し支えなければ教えて?」
「…世界一の剣豪」
「すごいわね。素晴らしい夢だわ。いえ、夢ではないわね。あなたならなれるわ。私の勘は当たるのよ」
「だといいがな。おめェの夢は?」
「私? 私はね、リオ・ポーネグリフを知ること。現実味がない夢ね。多分…夢は叶わない。これも勘」
「んなこたねェだろうが。思えば通ずる」
「…そうね、有難う。心が軽くなった気分よ。剣士さんのお陰。ふふ。
これだけでも、今日生きていて良かったと心から思えるわ。
あっ、単純だと思ったでしょ? でも笑わないでね」
屈託のない笑顔が、俺の目に焼き付く。驚いた。正直驚いた。こんな無邪気に笑っている元敵。
その笑顔をみてハッとした。俺はこいつの何を見ていたんだろうか。
敵だった頃の事を頭から離さず、砦という膜を張り巡らしていたのは紛れもなく俺だ。
こいつは既にその頃のそれではないというのに。
もしかしたら、もしかしたら俺はこいつを好きになりかけているのかもしれねェな。
だから、他のクルーに笑顔を振りまいているののも拘らず、俺には笑わないのが苛ついたんだ。
分かっちまったモンは仕方がねェ。腹ァ括るしかねェだろうが。
「笑わねェよ。お互いに大それた夢で結構じゃねェか」
「そうね」
「その夢を…そのお前の夢を見届けてェ。駄目か?」
「!」
「夢を叶えるのが俺が先か、お前が先かは分からねェが、お前も俺を見届けろ」
「勝手ね。でも…」
「でも?」
「…嬉しいわ。約束ね?」
「ああ。約束だ」
子供みたいに指きりをした。
嬉しそうに微笑むお前に、もう以前感じた暗影はもうどこにもない。
約束を交わした以上、お前を簡単には手放せない。
それがお前を縛り付けるだろうとも。
あとがき
船では決して出来ないであろう、走り込みやらのトレーニングをする為に崖道へ。
こういう設定も良いですよね? (汗)
ゾロの夢もでかいけど、ロビンちゃんの夢もでかいですよね。
有るか分からない物を探しているのですから。
最後までお読みくださって有難う御座いました。
07.05.08
07.05.10(修正)