novel : one

□突風注意*ZXR
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 風が強く吹き荒れるGM号の船上。時折突風が襲うほどだ。海賊旗が飛ばされそうに波打っている。
 航海は順調極まりないのだが、なんせここはグランドライン。気候は有って無いようなものだ。
 今日も、先程までは穏やかだったのが、今は突風が吹き荒れている。

 しかし、荒れているのは気候だけでは無いようだ。
 緑頭の剣士、ゾロがその緑頭を抱えて大袈裟に溜め息をついている。
 ゾロのすぐ近くに、分厚い本を真剣な眼差しで読み耽るロビンがいる。
 そのロビンを、ゾロは睨んでいた。

 ―あの女、今日に限って短けェスカートなんざ穿きやがって。

 ゾロは自分勝手な理由で苛立っていた。この吹き荒れる風を見てみろよと。この突風を感じろよと。
 確かに、ゾロが苛立つのも無理はない。二人いる女のもう一人、ナミはショートパンツの出で立ち。自然と野郎どもの視線はロビンに。
 その野郎どもの中の一人、サンジはいつもなら仕込みの時間なのに、意味もなく甲板にいた。
 それがゾロの苛々に拍車を掛ける。
 その他の野郎どもも、その時を今か今かと待ちわびているようだ。
 益々ゾロは苛々を募らせる。
 そんなゾロの思いとは裏腹に、ロビンは立ち上がった。ゾロもすかさず立ち上がる。

「どこへ行く?」
「コーヒーのお代わりをいただきに。あなたも何か飲むのなら、ついでだし持ってくるわ」
「いらねェし、コーヒーだったら俺が持ってくる。お前ェはここに座ってろ」

 ゾロは、でも…と躊躇するロビンの肩を押し、無理矢理座らせた。
 其処此処から落胆の溜め息が聞こえる。
 これはもう戦争だ。負けられねェ、ぜってェ死んでもコイツは、コイツ(のパンツ)だけは死守せねば。その思いだけだった。

 ゾロの気迫を感じたロビンは、分かったわ。お言葉に甘えさせていただくわね、と素直にゾロの言うことを聞いた。
 そそくさとゾロはキッチンへコーヒーを取りに向かう。
 ロビンはゾロの後姿を追い、キッチンに消えたのを確認すると、また活字の世界へ落ちていった。

「ほらよ」
「ありがとう。そういえば剣士さん、今日のトレーニングはどうしたの? もう終わり? そろそろお昼寝の時間かしら?」

 人の気も知らねェで…とゾロは思ったが、口には出さずに心の奥の奥の端へと追いやった。

「今日は気分が乗らねェ。それだけだ」

 そうなの? と、気になりはしたロビンだったが、本の内容が気になり、深くは追求しなかった。

 やれやれ…。溜め息を深く吐くゾロであった。まだ闘いは終わってはいない。ロビンが甲板にいる限り、緊張を崩すわけにはいかない。
 其処彼処にロビンを捉える視線がある。ギロリと睨み、威嚇する。
 外野の面々は即座に目を逸らし、意味も無い動作をしたり、奇妙な口笛を吹いたり、あからさまな態度を取る。
 ゾロは今日何度目かの溜め息を吐いた。

 暫くして、ロビンがまたもや立ち上がった。
 今度は何だ? ゾロも立ち上がり、ロビンの傍へ行く。

「どうしても分からない重要なポイントがあるのだけれど、そう言えば、つい最近その事に関して詳細を記した本を読んだの。その本を持ってくるわ」
「…今じゃなけりゃ駄目なんだな?」

 ええ。そうなの。と言いながら、ロビンは一歩を踏み出す。それが合図となり、視線が一同に集まる。
 さあ、戦闘開始だ…と思ったら、ゾロは意外な行動に出た。
 ロビンを横抱きにし、女部屋へ向かったのだ。もちろんブーイングは免れない。

「ちょ…、剣士さん?」
「ああ? なんだ?」
「どうしたの?」
「…なんか問題でもあるのか?」
「…いえ、別に」

 不思議そうに頭を傾けるロビンを見て見ぬふりをする。
 もう破れかぶれだった。体裁がどうの、プライドがどうのなど、ゾロはもう何も考えられなかったのだ。
 ロビン(のパンツ)を死守する―――それだけがゾロの心を占めていた。

 甲板に戻るときも横抱きで連れられてきたロビン。
 座らされ、訝しげにゾロを見るが、ゾロはロビンの傍らで大の字になり、眼を瞑っている。
 今日はおかしな剣士さんね、とゾロが気になりながらも、ロビンは先程の重要ポイントが気になる為、また活字の世界に溺れていった。




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