novel : one

□10センチ*ZXR
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 鍛練を終えた身体に、心地良い風が過ぎる。喉が渇いているのを忘れる程心地が良い。

「ロビンちゃ〜ん」

 クソコックの声だな。思考が戻り、喉の渇きが一瞬に蘇る。アイツもキッチンに居るのか。自然に足はキッチンに向かう。
 扉を開くと、そこに見えたのは、アイツ―ロビンが背伸びをして、高い棚から何かを取ろうとしている姿。その横に、いつものようにクネクネしているバカコックが居る。

「…何してんだ?」
「あ? 誰に言ってんだ? マリモ」
「はい、コックさん。これでいいの?」
「そうで〜〜すっ。ロビンちゃんありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。剣士さん、トレーニングは終わったの? あ、お水ね?」
「んだ、マリモ。水くれェ自分で飲め」
「コックさんはお料理に忙しいでしょ。いいの。それくらい私がやるわ」
「あ〜〜んロビンちゃん、あんなマリモ、甘やかしたらダメだよ〜〜」
「マリモマリモうっせェぞ、いい加減にしろよ」
「ふふ。本当に仲が良いのね。二人とも」
「「誰が!!」」
「はいはい。剣士さんお水どうぞ。コックさん、お鍋大丈夫?」

 スッとこういう事をしてくれる、コイツは誰にでも気が利く。俺は特別だがな。そう考えながら、おう、悪ぃなと礼を言う。

「なあ、さっきは何してたんだ?」
「さっき? ああ、コックさんに上棚にしまった大皿を取ってと頼まれたのよ」

 成る程、そういえば、コイツは俺よりでけぇんだっけ。
 10センチだよな。確か。コイツと俺との身長の差。好いた女より、俺は背が低いのか。分かりきった事を考えても、なんもならんが、考え出すと気になるよな。
 チラリとロビンを見る。清楚な顔して難しそうな本を読んでいる。

 コイツが踵の高い靴を履くと、より一層違いが分かっちまうな。
 今俺が履いてるブーツは結構な厚さだから、コイツがペッタンコの靴を履いてりゃ、同じか、寧ろ俺の方が若干高ぇか?
 なるほど、そうか、そうだよな。それでいいじゃねェか。簡単なこった。なんだよ、深く考えて損したぜ。

 いやいや、まてよ。コイツがペッタンコの靴? せっかくのこのスタイルでペッタンコか? すらりとした長身、具合がいいくびれ、でけェ胸、ぐっと締まった細い足首…。踵が高ェ靴履いたら、それだけでいい女だよなァ。それなのにペッタンコ靴か? おい。
 それじゃあれだろう、俺が愛用腹巻きを付けねェのと同じだな。…ちと違うか?
 とにかくだ、ペッタンコは却下だな、却下。
 いやいや、まてまて。根本的に、こんな事を考えてる俺ってヤバくねェか?
 と、我に返った俺の真ん前に、怪訝そうに俺の顔を覗き込むロビンの顔があり、内心ヒヤリとした。
 それを見透かされないように、仏頂面をした。
「剣士さん大丈夫?」
「…何が?」
「さっきから、にやけたり、仏頂面したりしてたから」
「気のせいだ。気にすんな」
「そう? それならいいのだけど」
 俺に向かって、俺にだけ微笑むコイツを、俺は心底惚れている。背の差なんて考えていたのが阿呆らしくなる。何を履こうが履かまいが、コイツは…ロビンはロビンだ。ったく、俺は何を考えてんだか…な。
 それよりも考えなくちゃならねェ事があんだろ? 俺。
 10センチをどうにかしなきゃ…な。
 背の事じゃねェ、俺とコイツとの残りの距離…をよ。









あとがき

 踵の高い…と表現しました。ゾロはヒールという言葉を使わないのでは? と思いまして。
 サンジだったら躊躇しないでしょうね。躊躇じゃないですね。当たり前…それが普通ですもんね。
 身長の差ですが、10センチは結構な差ですよね。理想は勿論、ロビンちゃんの方が低い事。
 でも背の低いロビンちゃんは考えられませんからね。
 あと、ゾロが思っている「残りの距離」とは、チョメチョメ(キャッ♪)する関係になるまでの距離とお考えくださると嬉しいです(*^^*)

Z「背なんか気にして恋愛できっか?」
T「うぉぉ〜大人だゾロ〜〜」

最後までお読み下さってありがとうございました。

07.04.23

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