novel : two

□懸想の花束*ZXR+L&S
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ぺろっ




「え?」
「うえっ、まだ出てくんな。止まらねェかな?」

 そう言いながら、私の頬を両手で添え、またも額に舌を這わすルフィ。

「ちょ…」
「あ? 何だよ、ロビン。いいか、大抵の傷はな、舐めときゃ治るんだぞ」

 またも徐に舐められた。今度は流下する血液を舐めとりながら、頬から傷へ、ねっとりと執拗に啜り舐める。
 なんと言っていいのか分からない衝撃が、背中を駆け抜けた。じくん、と私の胸もがこの悪戯な行為によって衝撃を受ける。

「……誰に聞いたの? そんな事」
「ん? サンジが指切った時言ってたぞ。ナミも自分の指舐めてそう言ってたし」
「それは…そうかもしれないけど…」
「だろ? にしし」

 満面な笑みで言われては、なす術がない。本当に、この船の船長は屈託がない。
 その笑みに当てられ、私自身も心から笑みを出す事が出来る。
 案に違わず、私も自然と笑みが零れていた。



 いつからいたのだろう。視線に気付きそちらへ見遣ると、そこには仏頂面した剣士がキッチン入り口の扉の横に立ったまま凭れていた。
 腕を組み、こちらを睨んでいる。下唇をあからさまに突き出し、機嫌は思わしくない雰囲気だ。
 どこから見られていたのだろうか。ふと気付くと、未だルフィの掌によって、私の顔は包まれている。
 我に返り、ルフィの掌を退けようとするも、ルフィ自身が離そうとしない。
 未だ額の傷が気になるようで、真顔で流下する血水と格闘している。
 ドカドカと、無遠慮な足音で近づいてくる彼。ルフィは気付いていないのか、額に唇がふっ付いてしまったかのように吸い付いている。

「おい、キャプテン。てめェ、何してやがる」

 ようやく額から唇を離したルフィが、ゾロへ顔だけを向ける。未だ私の頬は、ルフィの掌の中にある。
 ニカッと笑う、この少年には邪念というものは、ない。

「おう、ゾロ!! お前寝てなかったのか? いやよ、ロビンの傷が思ったより深くてさ。血が止まんねェんだ。だから舐めてるんだけど」
「あのな、キャプテン。んな事で止血できりゃ、医者なんざ必要なくなるだろうが。いいから退け」
「嫌だ! ロビンの傷はおれが治す!! お前こそあっちへ行け!!」
「おいルフィ! いい加減にしろよ!? コイツの傷はおれが治すから、お前は手ェ出すな!!」
「うるせェーーーー!!!! てめェら何やってんだ!! ナミさんの安眠を邪魔する奴ァーーー……!!!?」

 バンッと衝撃をも含んだ、それはそれはけたたましい音を鳴らし、キッチンの扉を開けたサンジが、レードルを片手に仁王立ちしている。
 私と目が合うなり、商売道具のレードルをほっぽり出し、ぐるぐると回転しながら、目をハートにし、紫煙すらハートの形で、それを燻らせながら私の元へと飛んできた。

「ルルルォォロビンちゅわーーーん、一体その傷はどうされたのーーーーッ!!!」

 だが。コックさんは私の傍へ辿りつく前に、ゴムの特製を活かしたルフィと、既に二本の愛刀を鞘から抜いたゾロによって、意図も簡単に阻止された。
 それでも、コックさんとてやられっ放しの訳もなく。得意な足蹴りで二人を圧倒していく。
 結局、その三人の熾烈なる闘いによって、クルー全員が起き出してしまい、三人の闘争を力づくで制したのは航海士さんの鉄拳だった。










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