精神詩(2) -Tranquilizer-

□作品No.31〜35
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No.32

ハヴィラ



背中を裂いて生まれた羽
痛みに濡れて赤く泣く

千切れた羽で飛ぶ先は
紫冥の遥か彼方を目指し

赤に生まれて広く散る羽
朽ちる躰は香りを知らず
血に飢えたまま蜜を求める

想いを育み虚空を抜け出し
刹那の破片に想いを棄てた
昔の痛みを思考に植えた

ハヴィラの翅を
天に手向けて




―――――――――――――――
*ハヴィラ…蝶のこと。
「紫冥」は大空のこと。
綺麗な羽を得る苦しみを知りながらも
それでも
儚くとも華麗に舞う蝶になれたら、と。
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