人生の杜

□自然農
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<国民皆農論>

略記

人の足が土に触れることがなくなり、手が草花から離れ、目は天を見ず、耳は鳥の声を聴かなくなり、鼻は排気ガスに麻痺し、舌は自然の味を忘れる。

 今や人間の五感はすべて自然から隔絶し、アスファルトの上を車で走るという、二重三重に土から遠ざかった生活に象徴されるように、真の人間のあり方から二段三段と遠ざかってきてしまった。

 私の無為の哲学は、人間が本来の自然の姿に立ち返って真の幸福というものを味わえる「真人の里」の復活を目指すものであり、その具体的方策は国民皆農という形で表される。

 人間の真の歓び、息吹、楽しみは自然の法悦であって、大自然の中にのみあって、大地を離れては存在しない。すべての人が、郷(むら)に帰って耕し、真人の里を作ってゆくことが、理想の村、社会、国家を作る道となるのである。

 国民皆農論は、万人は神の庭に還って耕す責任があり、碧空を仰いで歓びを教授する権利をもつことに立脚する。

 また、国民皆農は、形は小農であってなんらさしつかえないが、時代を超越し、ひたすら農業の源流を探索する自然農業でなければならない。
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