人生の杜

□フィルター
3ページ/21ページ

便利を手に入れると、漏れなく束縛も付いてくると思います。

私が幼い頃には、シャンプーもリンスもありませんでした。
固形石鹸で、体も頭も洗うだけで、髪の毛は短くて刈り上げ。
それでも、風呂上りは大変気持ちよいものでした。
シャンプーやリンスが発売されてから、それを信仰のように使う事が始まりました。
今じゃ、それ以外の洗髪を考えていません。(私は限界村生活が始まってからは流石にシャンプーは使わなくなりました)

無い頃は、無いんですから、それに不便を感じません。
知ってしまうと、人はもう駄目なんです。

富も権力もそうですが、人は望んでいたものを持つと、もう駄目なんです。
手放したくないし、手放さない事に大変なエネルギーを使います。

不便さに人は実感を伴います。
本当は、人がしたい経験は、実感を伴ったものです。

キャンプでの自炊は不便ですが、その不便を皆でするところに実感と共感が産まれます。
実感する事は地に足を着けて生きる事です。
実感をすることは、そこに心がある事です。
今を感じている瞬間です。

経済主義を放棄する事は、当たり前の便利を手放す事です。
知ってしまった人は、それを放棄する勇気を持てません。
だから、地球上には物事がピークに至った時、破壊が用意されているように感じます。

心のフィルターを持った人が、心のフィルターを捨て去る勇気をなかなか持てないのと良く似ています。
だから、フィルターの多さに辟易して、ピークに達すると病気になったり、自暴自棄になったりして、自己の破壊が用意されているように感じます。

相対的なものを経験したがる性向を持つ人間の宿命を垣間見ます。

私はフィルター、フィルターと念仏のように書いてますが、別にフィルターが悪い事だと思って書いてるんじゃありません。
人の悩みの根源を考察する時に、必ず現れるからです。
以前はフィルターが悪いものだと思ってましたが、今は持ったことを感謝しています。
相対性の世界では、フィルターが多く、そのエネルギーが大きいほど、相対するエネルギーも大きくなり、問題の所在がハッキリしてくるからです。
今起きている経済社会の問題も目に見えて来るにつけ、問題の所在が明らかになってきましたし、人々が意識し始めました。

そもそもフィルターって何でしょう?

知識がある事を善しとしている人は、知らない事がある事を悟られるのが我慢なりません。
知ったかぶりは、そんな理由がさせる技です。
「知らんの? 恥ずかしい〜っ!」と言われたら、機嫌が悪くなります。
知識が無くても、何とも思わない人は、「ホンマ〜、知らんかった〜、凄い!」って喜んだりします。
そんな事を言ってた人が、人は優しくなければならないと思っていて、「家の主人は冷たいっ!」て機嫌が悪くなったりします。

知識がある事を善しと思うと、知識が無いものは駄目だとなります。
知識がない事が不安になります。
不安はエネルギーです。
不安でない状態になるために、不安を隠す為にだけ、知識を得ることをします。
不安を隠す為に、聞いて来てもいない人に、俺はこんなに知ってるんだぞ〜っと自慢します。
知識がある事を善しと思っているんですから、知識を披露するところが無いと、自分の知識が活躍するところが無いと世の中の責任にします。
家に帰っても、誰も聞いてもいないのに、知識をやたらと披露して、自分の偉さを鼓舞します。
奥さんは、「そんな事より、弁当箱を洗って帰ってきてよ!」と心では不満に思っていたりします。
自分の知識に感動をしてくれなくなった奥さんを馬鹿にし始めます。
この辺りから、夫婦は本格的に、「価値観の相違」と言い始めて、冷戦状態、一触即発になります。
本当はフィルターの相違と言って欲しいんですが。(^^ゞ

フィルターの相違と言わずに、フィルターを持ってしまった事に気づいて欲しいのです。

知識を持つことは、この世では、正しい事として、常識の範疇になります。
知識を持つことが出世に繋がったりして、幸せになるという常識になります。
幸せの条件が知識になります。
正しいと思っているから、否定が出来ないのが最大のやっかいな所です。
実際、全て正しそうな事で知識の周りが固められています。
屈強なバリアーが幾重にも張られています。

知識を持つことが良い事。というフィルター。
それが、自分を幸せにすると確固たるものとして、譲らない人がいます。
それが、自分を悩ませているのに。
夫婦仲が悪くなっても、原因がそこにあるとは決して思いませんし、聞く耳も持ちません。

フィルターはそういうものです。

フィルターを捨て去るには、奥の奥のそのまた奥まで、分け入って、苦しそうに、悲しそうに、寂しそうにしている自分を「辛かったね!」と、抱きしめてあげる事が必要です。
「あるがままでいいんだよ!」と。。。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ