お題-夢

□近すぎる距離と揺れた気持ち
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午前の授業が終わり、各自いろんな場所でお昼を食べる準備をしていた



「行くぞッ鈴!」


「鉄ッそんな急ぐなよな!」




鈴と呼ばれたのは、北村鈴。
高校1年生。

そして、大きな弁当箱片手に鈴の教室に現れた少年…市村鉄之助

鈴とは同学年で隣のクラス
そして、同じ部活の言わば親友である


鉄之助は、弁当箱を持ち廊下を走る
それを追う鈴

この学校では、いつもの光景



そして、何段もの階段を駆け上がり
重々しい扉を開く



「今日は、早いんやな」


「烝も早ぇじゃん!」


「先輩には敬語使えや」




屋上に辿り着くと、上から声が降ってきたと思えば、人も降ってきた

鉄之助と鈴の前に、綺麗に着地した烝と呼ばれた少年

山崎烝。高校2年生。
鉄之助と鈴と同じ部活の先輩

鉄之助が敬語を使わないのは、烝が「敬語なんかいらん」と言ったから

3人は、適当な場所に円になって座り
それぞれ弁当を広げる





弁当を食べながら部活の話やゲームの話などに花を咲かせていると、下から複数の女子の声が



「なんや、今日はやけに騒がしいな」



立ち上がり、フェンスに体を乗り出す様に下を見る
それに習うかの様に、鉄之助と鈴も下を見る

下を見ると、1人の少女が複数の女子に囲まれているのが見えた



「何してんだ、あいつは」


「あの真ん中にいるの、無しじゃん!」


「……ま。危険は無さそうやな」




イジメにあってるのでは、と3人は心配したが
無しと呼ばれた少女も周りの女子たちも笑いながら話していたので
3人のイジメという考えがなくなり、また冷たいアスファルトの上に腰を下ろす



「多分、告白された後なんやろうな」


「なんで、そんな事分かんだよ」


「俺と同じクラスの奴が、今日の昼にでも無しに告白する言うとったから」


「へぇ〜。無しって男女関係無く人気なんだよな!」



鉄之助の言葉に、自分は関係無いとでも言うかの様に、会話には加わらず弁当へ箸を進めていた鈴の手がピタリと止まる



「無しって、男っぽい所あるけど優しいし、面倒見いいし、料理上手いし」


「フラれても、諦めへん奴もおるからな」



無しの話に盛り上がる2人
だが、そんな2人を信じられないと言った目で見る鈴

それに気づいた烝は、鈴に顔向ける



「どないしたん、北村?」


「お前たち…正気か?」


「「は?」」



いきなり、"正気か"と聞かれ首を傾げない者はいないだろう
烝と鉄之助は、頭に疑問符を浮かべながら鈴の話を聞いた



「あいつ…無しが優しい?面倒見がいい?…そんなもの、あいつにはないだろ。それに、あいつが料理するなんて想像も付かない…」



目が点になる烝と鉄之助
そして、何かを思い出したのか鉄之助は、パンッと手を叩き



「そう言えば、鈴は無しの幼なじみだ」



なッ!と鈴に聞けば、あぁ と短い返事が返ってきた

さっき女子たちの中心にいた無しは、鈴の幼なじみ

小・中・高と、同じ学校だが鈴と無しが最後に会話したのは中1が最後

お互い部活が忙しく、会話をする暇さえ無い
家も隣だが、朝行く時間帰ってくる時間が互いに違う為
顔すら合わせない

それのせいなのか、鈴は今の話には納得出来る部分がなかった



「あいつが、何回も告白されるのも分からないしな」


「そうかぁ?無しって美人じゃん!」


「…は?頭大丈夫か鉄?」



食べ終えた弁当箱を片付け
鈴は、怪訝そうな顔で鉄之助を見ると、逆に有り得ないという顔をされてしまった

すると、黙って何かを考えていた烝が鈴に



「たぶん、そう思うんは幼なじみっていう関係が長いからやないか?」


「え?」


「顔は、ずっと前から見慣れて、性格なんかも慣れたんやろ。せやから、北村から見た無しは男っぽくて普通の顔立ち」



烝が、何を言いたいのか分からない鈴
隣で聞いている鉄之助も、理解していないだろう










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