「あー…なんかカレー食いたい」
解きかけた数式から声の主に視線を移すと、そいつは椅子の背にもたれかかりぼんやりと天井を見上げていた。
…どうして数学の問題を解いていてカレーが食いたくなるんだ。
一度こいつの頭の中を見てみたい、といつも思う。話の変化についていけないことなんてしょっちゅうだ。
「なー、阿部んちのカレーって辛口?甘口?」
オレがそんなことを考えているなんて知るはずもなく、完全にカレーの話題に夢中なようだ。
「辛口。激辛口」
…少しムカついたのでわざとそう答える。予想通りの反応が返ってきた。
「うっそ、マジで!?激辛ってどんくらい?舌がひりひりすんの?」
激辛を想像したのか、眉を寄せて痛そうな顔をしている。
…ほんと、分かりやすい。
「…水谷んちは、甘口だろ」
「へ?なんでわかんの?」
お前見てりゃ分かる、なんて言っても通じないだろうけど。
砂糖が入ってても、不思議じゃない気がした。…オレは食いたくないけど。
「オレんちのはねー、はちみつとりんごが入ってて、あとケチャップとー…」
「…もういい、わかった。聞いただけで口ン中が甘ったるくなる。聞きたくない」
えーなんだよ、と不満の声を上げる水谷を無視して、再び数式を解き始める。
甘い甘い…水谷みたいなカレー。
甘いもんは好きじゃねぇけど。
…水谷んちのカレーだったら、食ってみてもいい、なんて。
バカみたいなことを考えてしまった。
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お題001番、「甘いカレー」。お題を聞いた瞬間に水谷が思い浮かびました(笑)
きっとものすごく甘いカレーなんだろうなぁ…とか。
水谷は甘口カレーが大好きそうなイメージです。お子様カレー。
反対に阿部は辛口が好きそう。汗かきながら食べるカレー。
ちなみに自分は辛口が好きです。