Song For You

□君がいて、僕がいる
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阿部と、出会う前のオレは。

たぶん、「好き」の意味を知らなかった。

誰にでも言える代わりに。

本当の意味を、知らなかったんだと思う。



「…同じクラス、だよな?オレ、阿部。阿部隆也…よろしく」



初めて話したのは、野球部を見に行ったあの日。

既にユニフォーム姿で練習してた阿部を見たときに…

もしかしたらもう、惹かれてたのかもしれない。

それとも、教室で見かけたときだったのかもしれない。

いつか、なんて分からない。

ただ…気づいたら好きになってた。



オレの片思いで終わるものだと思ってた。

阿部も同じように思ってくれてたことなんて…気づきもしなかった。



「…なんか、ほっとけないから」



阿部がそう言ってオレを好きだと言ってくれたあの日。

オレは、幸せって気持ちを初めて知ったような気がした。

阿部がいてくれるから、幸せになれるんだって。

阿部本人に、伝えたことはない。

きっと、照れてくだらないって言うに決まってるから。


…だけど。

阿部と一緒にいるから、オレは本当の「好き」を持っていられる。

阿部がいるから…オレは今のオレでいられるんだ。



大人になって…まわりが変わっていっても。

このまま、ずっと一緒にいられたらいい。



阿部は、オレにとって空気とか、太陽みたいなものだから。

ないと困るんだ。





「…水谷?」

「ん…」

「…眠いのか…?」



阿部の声で意識が現実に引き戻される。

夢を見てたような気分で、頭がボーッとする。

でも…阿部の声が心地よくて。

目を閉じたまま緩く首を振る。



「…寝てもいいぞ」

「……阿部…」

「…ん…どうした…?」



甘えるように名前を呼ぶと、返ってくる声。

その声がいつもより優しく感じて、それだけで嬉しくなる。



「…オレが寝るまで、頭撫でてくれる…?」

「…なんだ、いつもに増して甘えんなぁ…」



オレの言葉に、阿部がクスッと笑ったのが分かる。

でも、その声に嫌がる様子はなくて。


仕方ねぇな、と声がして…阿部の手がそっと髪をなでる。

気持ちよくて、すぐにでも寝てしまいそうだ。



「…あべ…だいすき…」



うとうとしながら小さく呟く。


半分眠りかけた意識の中で…

オレもだよ、と囁くような声が聞こえた。




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阿水。なんか…これ甘々になりました(笑)
リクエストいただいた曲。「黄身.と.イウ.ひかり」です。
この曲、ちゃんと聴いたのは初めてだったんですが…
すごく素敵な曲で、なんだか泣けてきました。

幸せなお話にしたい…と思いながら書いた結果、
こんな甘いものに(笑)

リクエストありがとうございました!
お待たせしてすいませんでした;;





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