Song For You

□君と迎える朝
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部屋に差し込む日差しの眩しさに目が覚めた。

まだはっきりと開かない重い瞼を無理矢理に開くと、時計に視線を向ける。

時刻は正午を少しまわっている。

…かなりのんびりしてしまったみたいだ。



軽く腕が痺れているような感覚に、隣へ視線を向ける。

オレの腕を枕にして眠っている相手の、柔らかそうな髪にもう片方の手を伸ばす。

そっと触れると、くすぐったそうにしてオレの腕に顔を押し付けてきた。

思わず笑みがこぼれる。



窓からは暖かい日差しが差し込んでいる。

もう冬も近いけれど、こんなふうに晴れた日の午後は暖かく心地良い。

気持ちの良い目覚め。

それは、天気のせいだけではないだろう。

再び隣に眠る相手へ視線を戻す。

気持ち良さそうに眠るその顔を見ていると、幸せな気持ちになる。

いつもと同じ部屋の、同じ目覚めでも…いつもとは違って何だか嬉しい。

そんな気分になるから不思議だ。



「…水谷…」



小さく名前を呼ぶ。

水谷はまだ深い眠りの中なのだろうか、んー…と小さく唸っただけで目を開けない。

腕は少し痺れているけれど、水谷の温もりを感じる。

起こさないようにそっと髪を撫でると、眠っている水谷の表情が僅かに緩んだ気がした。



目が覚めて、隣に水谷がいる。

そんな朝を…すごく幸せだと思う。

こんなこと、水谷には絶対に言えないけれど…。



「…好きだよ…」



寝顔を見つめてそっと囁くように呟く。

…と、水谷の口元がヒクッと動いた。


「……」

「……っ…」


耐え切れなかったのか、水谷はプッと息を洩らした。



「…っ…おま…寝たフリしてやがったな!?」

「…ご…ごめ、だ、だって…!」

「だってじゃねぇ!このやろ…っ」

「っわ…た、タンマタンマっ…」



笑いながら謝る水谷の頭をぐしゃぐしゃに掻き混ぜる。

顔から火が出そうなくらい恥ずかしいってのは、こういうことを言うんだろう。

水谷に顔を見られたくなくて、布団を引っ張り水谷の頭から被せる。



「…もー…そんな照れなくていいじゃん」

「うるせぇ!起きてんならすぐ目ぇ開けやがれ!」

「…だってさ、阿部があんまり優しい顔で見つめるから…」




もったいなくて、と水谷があんまり幸せそうに笑うから。

…今回だけは、見逃してやることにした。



水谷と迎える、こんな一日。

何よりも一番、幸せな午後。




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幸せな阿水話。こちらもリクエストいただいたもの。
歌は「し.合わせの.風.けい」です。
この歌は自分も阿水にいいなぁとひそかに思っていたので、すぐに話ができました(笑)

リクエストありがとうございました!





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