Song For You

□約束
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通り過ぎる風が、特に冷たく感じるようになった。

もうすっかり冬だ。

何度目の冬だろう。

…君と、こうして過ごすようになってから。



「あー…こら、走ったら転ぶぞ」

「平気だって」

「足元よく見て…」

「浜田おっそいぞ!」



毎日のように通る道。

夏には青々とした葉をたくさんつけて重そうにしていた木も、今は葉ひとつ身につけていない。

落とした葉が道に散らばり、すっかり道を覆っている。

落ち葉の絨毯みたいだ。

歩くたびにサクサクと軽い音がする。


少し前を歩く小さな後ろ姿に目を向ける。

落ち葉を蹴りながら歩くその姿は、なんだか子供みたいだ。



「浜田!」

「ん?」


そんな姿をまるで親になった気分で眺めていると、不意に泉が振り返った。

そうして、俺の方へと走ってくる。


「どうした?」

「んー…」


傍までやってきた泉に問いかけると、泉は難しい顔をして空を見上げている。

そうしてしばらくじっと空を見上げて、


「…あ、ほら!」


重たそうな雲に覆われた空を指差す。

指差す先で、白い小さなかたまりが落ちていくのが見えた。


「あー…雪か」

「な、初雪じゃねぇ?」

「そうだな」


眺める俺たちの上から、次々と小さな雪の結晶が降ってくる。

積もるかな、と泉が楽しそうに笑った。



「…さぁな。ほら…寒いからもう帰るぞ」

「えー…つまんねぇの」


まだ空を見上げている泉を促し、その手を取る。

小さなその手は、すっかり冷たくなっていた。

握った手をそのまま上着のポケットへ入れる。


「…あったけぇ」


その仕草を見ていた泉が、照れたように笑って肩を竦めた。

笑みを返して、ゆっくりと歩き出す。



「な、去年も初雪一緒に見たよな」



歩きながら、不意に泉が呟いた。

…そうだったろうか。


「…そうだっけ?」

「なんだよ、覚えてねぇの?去年はほら…浜田んちで」

「…あー…俺が風邪引いて寝込んでたときか…」


ぼんやりとした記憶。

たしか、泉が見舞いに来てくれたんだっけ。

それで…部屋の窓から二人で雪を見たんだ。


「今年も…一緒に見れたな」

「ん、そうだな」


俺の呟きに頷くと、泉は珍しく俺の方に寄りかかり体をくっつけてきた。

…寒い日は、いいな。

なんてことをしみじみと思いながら、ポケットの中の手をギュッと握る。

少し暖かくなった小さな手が、お返しとばかりに握り返してくる。



来年も、同じように二人で雪を見れるだろうか。

こんな風に、二人で歩けるだろうか。



「…来年はうちん中で見れるといいな」



ふと、俺の気持ちを読んだかのように泉が俺を見上げた。

驚いた顔をしていたんだろう。

俺の顔を見て、泉はおかしそうに笑って。


お前の考えてることなんか、全部わかんだよ。


そう言って、空いている方の手を伸ばし…ぽかんとしている俺の額を小突いた。



「い…っ、てぇ!」

「アホな面してるからだろ」

「泉ひでぇよ…」



左手で額をさすりながらも、思わず顔が緩む。



来年も、一緒に。


雪の下で、二人で笑ってられたらいいな。


言う代わりに、泉の手をきつく握ると…。



約束、とこれ以上ない笑顔がかえってきた。




寒い雪の日。いつもと同じ道。

これからも、ずっと変わらない。

何年たっても…一緒にいよう。



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ある寒い冬の日の、二人。
特に表記せずにおきましたけど、若干歳くってる感じ。
2年生か3年生になったくらい…かな。
歌は「雪.smile」です。大好きな歌。
この歌は最後は切ない感じに終わってしまうのですが、途中まではすごく浜泉だなぁと思ってたので…。
最後のとこはいれずに途中までイメージしました。

いつもツンツンな泉も、寒い日は少しデレちゃう、みたいな(笑)





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