tajihana
□距離
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離れてる時間が、惜しい。
いつだって傍にいたい。触れていたい。
これって、ただの欲求不満?
「はっないー!」
「うわっ、また来た…」
授業がようやく終わって、急いで7組の教室に走る。
休憩は10分しかない。1分でも長くいたくて、授業が終わる5分前には起きて待つようにしてる。
…それなのに。
「お前なぁ…こんな短い休憩時間までこっち来んなよ」
1分でも1秒でも長く一緒にいたい相手は、こんな反応。
…こんなふうに思ってんのって、オレだけなの?
「…なんだよー…花井と一緒にいたいから来てんじゃん…」
「だからってなぁ…」
オレがむくれてしまうと、花井は文句を言うのを止めた。
呆れた顔。わかったよ、なんていうけどほんとは分かってないだろ。
「花井は、オレに会いたいとか思ってくんねぇのかよ?」
「あー?…つってもなぁ…お前、思わなくても傍にいるだろ。いつも」
不満そうに問うと、花井は困ったように笑って首を傾げた。
…そりゃ、いたいからいるけどさ。
「たまにはさぁ、花井から会いに来てよ」
「あー…まぁ、気が向いたらな」
教科書見ながら言われても、信じられないんだけど。
それきり、花井は何を聞いてもあー、とかんー、とかしか返してくれなかった。
あっという間に10分は過ぎた。
***
花井は本当にオレのことが好きなんだろうか。
時々、本気で悩む。
告ったのもオレ。
一緒に帰ろうって誘ったのもオレ。
初めてのキスもオレからだし…セックスしようぜって言ったのもオレ。
花井は、どう思ってんだろ…。
珍しく、授業の間ずっと寝ないで考えた。
考えて考えて…。
「…おい、田島」
「……あ?」
泉に声をかけられて気づいたら、昼休みになっていた。
結局オレは2つの授業分悩んでいたらしく。
間の休憩も、悩んでる間に過ぎてしまっていた。
…休憩、花井に会いに行かなかったの久しぶりだ。
ぐるる、とオレの腹が鳴る。
花井を誘って、飯食おう。
…そう思って、席を立つと。
「……あれ」
教室のドアの前に、坊主頭の後姿が見えた。
隠れるように背中を向けていても、見間違えるはずがない。
誰よりも一番、大好きな背中。
「はない…っ!」
勢いよくその背中に飛びつくと、怒っているような照れているような表情がこちらを向いた。
「…1分でも一緒にいたいんじゃなかったのかよ…バカ」
オレは思わず背伸びして、その赤い頬にキスをした。
…花井はめちゃくちゃ怒ってたけど。
1分でも、1秒でも、離れたくない。
ずっと、一緒にいような。花井。
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なんか、勢いで出来上がったそれだけの話。
田花といっていいのか、花田といっていいのか…微妙な所です。
でも花井と田島のカップルは書いてて楽しい。
田島の直球なとこが、好きです(笑)