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□阿水クリスマス
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「クリスマス?…んなの、どうでもいいだろ」



クリスマス。恋人と過ごす幸せな時間。

…オレだって、一応そういうのに憧れたりもする。


だけど一緒に過ごしたい相手の反応はこうだ。

文句を言うとその次に出てくる言葉は、



「オレはクリスチャンじゃない」



それはわかってるけど。

オレだって別にクリスチャンじゃないけど。


…クリスマスって、なんかワクワクすんのはオレだけなんだろうか。



何を言っても最後にはめんどくせぇ、で終わるに決まってる。

せっかくのクリスマスなのに。



「じゃ…じゃあさ、せめてクリスマスのプレゼント、何が欲しいかだけでも…」

「…いらねぇよ、そんなの。お前金ねぇって言ってたろ」

「ぅ…」



先月の阿部の誕生日。

結局、オレは金が足りなくてまともなプレゼントを買えなかった。

阿部は気持ちだけで十分、なんて珍しく優しいこと言ってくれたけど…。


その分、クリスマスはちゃんとしたプレゼントを渡したい。



「ほら、さっさと帰んぞ。寒い」



寒そうに体を丸めた阿部に促され、学校を出る。

吐き出す息が白い。

…クリスマスには雪、降るだろうか。



「あ…阿部」

「…んだよ?」



まだしつこくクリスマスの話を振られるのかと、阿部は嫌そうな顔をした。

違うよ、と首を振り、阿部の手を指差す。



「手袋…穴あいてる」

「…あー…ほんとだ」



どうりで寒いと思った、と阿部はため息をついた。

右手の親指の付け根あたりに、小さな穴が開いていた。



「これまだ買ったばっかなんだよな…絶対新しいのは買ってもらえねぇわ」



阿部が困ったように笑ってひらひらと右手を振ってみせた。

その仕草を見て、オレはひらめいた。



それだ。

クリスマスのプレゼント。



「……なんだよ、気持ち悪ぃな」

「んー…?なんでもなーい。それよりさ、昨日のアレ見た?」



プレゼントを思いついてにやりと笑ったオレを見て、阿部が訝しげな顔をした。

慌ててごまかすと、別の話題を振る。

クリスマスプレゼントは、やっぱり中身を知らないほうが面白いもんな。



いつも通りくだらない話をしながら、オレたちは家へと向かった。


頭の中は、手袋とそれを見たときの阿部の驚いた顔でいっぱいだった。

明日は、嬉しい一日になりそうな気がした。


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クリスマス企画

12/24




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