拍手のお話

□片思いシリーズ
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 加藤 団蔵





「なあ!」


うそだうそだ
団蔵くんがこっちを見ながら何か言ってる。
きっと乱太郎くんとか、きり丸くんとか、しんべヱくんとか
一年は組の子を呼んでいるんだ
私じゃない、ぜったい。


「ねえ、聞いてる?」

『え?』

「だーかーらー、さっきから話かけてるんだけど」

『き、聞いてるよ!!』


うそうそうそだよ
わたしに話し掛けてきてくれてる!?
あの団蔵くんが!?
こんな私に!?
ど、どうすればいいの…?


「あのさ、お願いがおるんだけど」

『お願い?』

「そう!お願い!」


も、も、もしかして…
お付き合いしてくださいとか!
い、いや、そんな事ありえないいけれど
結婚しよう、とか!?


「字、教えてくれない?」

『…え?字を?』

「なんだよ、笑いたかったら笑えよ」

『ううん、違うの、教えるよ、教える』

「…おかしなやつ」


うん、そうだよね
きっと私はオカシイヤツ。



「で、どーしたら上手くなるんだ?」

『ううんと…わかんない』

「はー?!なんかコツくらいあるだろ!」

『字はだんだん上手くなるものなんだって』

「嘘っぽい。」

『ほんとだよっ!ほんと!』

「そっか、じゃあ書くしかないか」

『うん、頑張って』

「ん。」


見ているだけでいい
こうやって近くに入れるだけで幸せ
ドキドキする、どうしよう。


「何か自分の名前書くのも飽きてきたな…」

『そう?』

「うん、上手く書けないし」

『違う子の名前とか、書けばいいんじゃないかな』

「んー、それもそうだな」

「!!」

「お、だんだん上手くなってきたかも」

『うん、上手くなってる…』

「ほんと!?よし、頑張るぞー」



大好きな貴方に書かれているのは

正真正銘、私の名前。

知ってたんだ、私の名前。



「この名前書きやすいし、結構いいと思う」



この名前でよかった

ほんの少しの間、これまでに無いくらい

幸せを感じれたのは、貴方のおかげ。



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