忍術学園関係者

□消毒液なんかいらない
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『みんなー、ありがとー!』

「「「「はーい!」」」」


そう言って私は今まで遊んでいた一年は組の皆に敬礼をすると
一年は組のみんなも大きな声でいい返事をしてくれた
みんなが手を振ってくれたので
私も皆に向かって、大きく手を振る
そんな風に手を振っているほうの逆の手の中には
先ほど作ったものが大事に収まっていた


『さっそく、届に行くねー!』

「「「「頑張ってくださーい!」」」」

『うん!頑張るー!』


皆に応援してもらい、俄然やる気になった私は
鼻歌なんかも歌い、とってもいい気分で
軽やかに走りながら大好きなあの人にもとに向かっていった


「名前さんも物好きだよなー」

「うん、だってあの…斜堂先生だもんね」


きり丸くんとか、乱太郎くんとかが
そんなことを言っているなんて全く持って知らずに
先ほどの軽い鼻歌を歌いながら彼を探していると
相変わらずの猫背で、暗い顔をして
そんな暗い顔よりもっーと暗い空気をまといながらも廊下を歩いている
私の大好きでたまらない、彼を見つけたので声をかけた


『斜堂せーんせっ!』

「はい?…なんですか、って…ぎゃあぁあああ!!」

『ほえ?』


いきなり叫ばれたもんだから、当の私は間抜けな声が出た
叫びながらも後ずさりした先生の視線は、私の手元に向かっている
なんで、手元…?
…ああ!そうだ、私は先生に
これを渡そうと思って来たんだ!


『えへへ、これ一年は組の子達と作ったんです』

「い、いいから!そんなもの、早く!捨ててきなさいいいぃ!!」


私が手の中にある泥団子をぐいっ、と先生へ差し出すと
先生は恐ろしいものを見た、と言ったような顔をして
さらに私から離れて、青白い顔をしながら
ぎゃあああ、と言う悲鳴をあげている
せっかくあげる、と言ったのに全力で否定されてしまった
斜堂先生ったら、捨てるだなんて酷いじゃありませんか!
私が丹精込めて大事に大事に、作ったのに!


『折角先生のために作ったんですもん、いやですよう』


だからぜひとも受け取って下さい!と言って
ぐいっ、とソレをまた近づけると
ひいっ、とまたまた後ろに下がる斜堂先生。
あ、バッチイって思ってるな!と先生の考えている事まで分かってしまった
でも、そんな事が分かるのも
私と斜堂先生の愛の力っていうやつだ!と思うと嬉しくなってしまう


「…いいですか、泥の中は、ばい菌がいっぱいなんですよ。」

『私の愛がいっぱいです!』

「いいから早く手を洗って…消毒してきなさいいいい!!」


ばい菌はたくさんいるかもしれない!
でもね先生!
そんなものより、私の愛の方が勝ってます!
そう思って泥団子を大事に持ったまま、どんどん斜堂先生に近づくと


「近づくなあああ!!!」

『だめ!貰ってください!』

「バッチイィイ!!」

『あ!斜堂せんせいっ…行っちゃった』


そう叫んで自分の部屋に逃げ込んでしまった
バッチイだなんて失礼な!
先生は逃げ足がとっても速い。
この前はジュンコ、って言う伊賀崎くんの蛇の模様が綺麗だったから
斜堂先生に見せてあげようと思ったら
しゅぱあっ、と物凄い速さでそこらじゅうに消毒液を撒きながら逃げられてしまったし
喜三太くんのナメクジ…確かナメ千代って可愛い子を
見せてあげよう!と思って持っていったら
一年は組の山田先生と土井先生の部屋に、追いつけないくらいの速さで逃げ込まれてしまって
私なんか中にも入れてくれなかった!
ふむ、どうしたものか…と
自分の手の中にある泥団子を見つめてぽつり、と思う


『はーと形が、よかったかな?』


まん丸なソレを少しだけ変形させて
可愛い、はーと形にしてみた
斜堂先生はたぶん受け取ってくれないと思ったから
地面に置いておいて、「斜堂先生へ」と書いておく
オマケに好きです、って書くのは
先生は恥ずかしがり屋さんだから、やめておいたけど
本当は大好きだよ!


『お腹すいた…はっ!…からあげていしょく!』


そろそろお腹も空いてきた頃合だな、と思ったら
今日の大きな大きなビッグイベントの事を思い出したので
まず手を洗って、食堂へ行こう!
そう思って、足早に駆け出した


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