□俺のもの?誰のもの。
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†紫苑side†
「どういう事だ、イヌカシ。」
古びた椅子に拘束された僕が最初に発したのはそれだった。
「みりゃわかるだろ。アンタを拘束してんの。」
目の前に立つイヌカシの口角がつり上がる。
下卑た笑みだった。
──────
時は遡ること一時間。
いつも通りに犬洗いの仕事をしていた時のはなしだった。
「おい、紫苑。そろそろ飯の時間だぜ。」
最近、僕はイヌカシの家で昼食を食べるようになっていた。
もちろんちゃんと飯代は給料から引かれている。
イヌカシらしいな、と僕はクスクス笑った。
「早く来ないと出さないからな。」
スタスタと歩いていくイヌカシに慌ててついていく。
「イヌカシ、今日はなんだい?」
「とっておきのフルコースさ。今日は俺の知り合いから新鮮な果物を貰ったんだ。」
「へぇ。それは楽しみだな。」
そんな他愛もない話をしながら歩いていると、イヌカシは一つの部屋の前でとまった。
「イヌカシ?ねぇ……ッ!!」
ドスッといきなり腹に走る衝撃。
何が起きたのか理解できないうちに、僕は意識を失った。