marionette

□月夜に囁く
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その背は遠くて。
追い付きたいと願いながら、決して届く事のない手。
でも、やっぱり誰より大切だから。
俺は守るよ。
アッシュ……









【月夜に囁く】









レムの塔に向かうのが決定した時、俺は不安だった。
アッシュは俺の目を通して、耳を通して話を聞いていたから。
アッシュは無茶な事ばかりやろうとする。
消えるべきは自分の方なのに、アッシュは自ら命を棄てようとする。
だから、俺は不安で怖くて。
この手が届かないのがもどかしい。


「どうしたんだ?ルーク」


「ガイ……」


ガイにアッシュの事を話してみた。
さっきの話をアッシュが聞いていた事。
そのまま回線を切られてしまった事。
それが、とても不安だという事を。


「……それで、お前はどうしたいんだ?」


どうしたいのか。
その問の答えは決まっている。
俺がレプリカたちと障気を中和するって決めた時も。
そして今も。
すべてはアッシュの為に。


「アッシュを力づくでも止める」


でも、ガイの悲しそうな顔を見るとその決意が揺らぐ。
それはガイもわかってるんだろう。
一瞬悲しそうな顔をしても、次には笑って、困った奴だなって言う。


「ま、ルークらしいっちゃらしいな。いいんじゃないか?それで」


「うん。ありがとうガイ」


「どういたしまして。眠れるまでちょっと散歩でもして来い」


ガイのその言葉に甘えて、ルークは外に出た。
月夜の空は綺麗で、そのまま吸い込まれて消えていきそう。
本当に、消えるのだろう。
仲間である皆は反対していた。
結局、俺の意志を貫き通し、ジェイドは不本意ながらも眼鏡の位置を直して溜め息をつく。


『仕方ありませんね。確かにレプリカと被験者、どちらを優先するかを考えればルークのほうが適任です。ですが、もっと他の方法があるかもしれません。私はギリギリまで調べて来ます』


ジェイドにしては珍しく、最善の方法を取らずに別の方法を探すという。
俺は嬉しかった。
仲間の皆が、自分を心配し、身を案じてくれる。
それだけで、十分なはずだった。
俺は幸せをもらった。
存在意義も見付けた。
けれど、我が儘を言うならばやっぱり生きたい。
アッシュと共に生きたい。


「……無理な話なのはわかってんだけどさ」


もし願いが叶うなら。
今この場所にアッシュが来てくれたらいいのに。
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