Cross World
□spring-01
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潤と杏奈とヤタの三人は、クラス表が貼られた掲示板の前で苦笑いを浮かべていた。
「凄いな…」
ポツリと呟くヤタ。
そう、掲示板の前ではたくさんの生徒が集まりガヤガヤと賑わっているのだ。
その中にはお目当ての人と同じクラスになれて喜ぶ者や、逆になれなくて嘆く者や何故か鼻血を出してガッツポーズしている者までいる。
…ってあれは烈架と優斗だった。
よしっ!他人のフリをしていよう。
「これじゃあ確認出来ないね〜」
「人が減ってから確認するしかないよ。僕はあんな壁にぶつかりたくないし」
筋肉と汗で埋め尽くされた男共の中を入っていくなんて僕には無理だ。
見なよ…
女子生徒が確認出来なくて困ってるじゃないか。
あまりの威圧感に泣いてる子までいる。
「全く…」
そんな状況でやれやれと呆れたように溜め息を吐きながらヤタが掲示板に向かっていく。
どうやら…
「やっぱりヤタってオカンよね」
泣いてる女の子にハンカチを渡しているようだ。
ごめんヤタ。
やっぱりキミはお母さんにしか見えないや。
「あっ!マッキー!グリ姉〜!!」
ヤタを見ていた筈が杏奈の言葉にいつの間にか視線が杏奈の発した言葉の方に向いていた。
潤の視線の先には頬にバンソーコをして手には包帯を巻いているマッキーと、眼鏡をかけて柔らかな雰囲気でマッキーの横を歩いているグリムがいる。
マッキーは潤と杏奈に気付くと「よっ!」と手を上げて、グリムは手を振っていた。
「二人とも春休みはどうだった?」
「いい休みだったけど、マッキー大丈夫?怪我してるけど…」
杏奈の言葉にマッキーは、ニカッと笑って口を開いた。
「こんな怪我痛くも痒くもねぇよ。それに…」
マッキーは杏奈の耳元に口を近付けて小さく呟く。
「グリムの前で怪我の話すると、また昨日みたいに泣きそうになるから勘弁してくれ」
どうやら、昨日任務から帰ってきてボロボロだったのをグリム姉や梨天に心配されて二人が泣きそうになったそうだ。
マッキーも大変だねぇ〜。
「グリム姉は春休みどうだったの?」
話題を変えるように口を開く杏奈。
首を傾げた姿に一瞬可愛いと思ってしまうとは、どうも複雑な感情です。