Short box

□恋の温度
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「寒い」



辺りはもう暗く、町には色とりどりの綺麗なイルミネーションが輝いている。

そしてレベイユの広場には、大きな大きなツリーが。
てっぺんには、お約束の金の星が瞬くように輝いている。


そう、今日は所謂「クリスマス」。





「寒い、と言われてもな・・・。
冬だからとしか言いようが無い」


「馬鹿。そんなありきたりな答えは求めてないのよ!
私は寒いの、なんとかしなさい」


「・・・相変わらず横暴だな」



小さく嘆息し、俺の来ていた分厚いコート(コイツも着てるんだが・・・)を頭から被せた。

俺のコートがでかかった所為か、見事に全身が隠れてしまった。

・・・不覚にも可愛いとか思ってなんか無い。


すぐさまコートの襟元をコイツの肩の位置へと掛け直した。




ひゅぅ


鋭い冷風がさっきまでは温まっていた体に突き刺さり、余計に寒さを感じた。




「(寒い、)」



さっきコイツが呟いた言葉を心の中で呟いてみた。

いや、本当に寒いんだが。

まあ、まだいつもの黒いコートを着ていたからよかった。





「これで文句無いだろう。ほら、行くぞ」


二歩、三歩進んでくいっと後ろに引っ張られた。


コイツ、一歩も進んでない。



「・・・今度は何だ」


「何だ、じゃないわよ馬鹿。何震えてるの。
寒いのバレバレよ」




何故か、怒っていた。





「別に寒く無い」


「この期に及んで私に嘘をつくつもり?
私は寒いとは言ったけれど、コートを貸せとは一言も言ってないわ」



じゃあどうしたいんだ。




「私は・・・・・・その、・・・っ」



バサッと大げさな音を立てて、ついさっき俺が掛けたコートを強引に俺に押しつけた。

一体なんだと怒鳴ってやろうと思ったが、コイツの顔が赤面していたから止めざるを得なかった。




「だから!私は!


・・・・・・・・・抱きしめて欲しかったのっ!!」




町のど真ん中の広場で、なんて可愛いことを言うんだ。





恋の温度



(悴んでいたはずの俺の手は)

(自然と彼女の背中へ回っていた)



《ほら、温かい》



END
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